葵の月 梶よう子著
読者引き込むスピード感
何という面白さであろうか。物語は、徳川家治の継嗣・家基の毒殺にはじまり、これを阻止できなかった西丸書院番士・坂木蒼馬の謎の出奔へとつながる。
それを待っていたかのように、蒼馬の許嫁(いいなずけ)・志津乃に近づく、あまりにも如才のない男、同じ西丸書院番士の高階信吾郎――。蒼馬の出奔には何かある、と信じる志津乃は彼を捜し出そうと決心する。
作者は物語の中盤で手のうちをすべてさらしているのに、それでもぐいぐいと引き込まれていく。脇の人物にまで及ぶ優れた人間観照。月が照らし出す各々(おのおの)の人生。そして、圧倒的なスピード感。もう止められない。
これがいま『連鶴』や『ヨイ豊』で、ノリにノっている、梶よう子の実力だ!
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年5月26日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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