クマムシはどんな生き物? 乾燥すると「不死身」に

「不死身」のクマムシ、どんな生き物?

スーちゃん 30年以上も凍(こお)っていたクマムシが復活したって聞いたよ。クマムシってすごい生命力を持つ不死身の生物なんでしょう。ムシってついているけど、昆虫じゃないの? どんな生物なのかな。

乾燥するとあらゆる環境に耐えるんだ

森羅万象博士より クマムシは「緩歩(かんぽ)動物」といって、ミミズやゴカイの仲間と昆虫(こんちゅう)の間に位置する生物と考えられている。8本のあしでゆっくりと歩く姿がクマににているからクマムシという名前がついたんだ。約1200種類いるよ。世界中のどこにでもすんでいて、ヒマラヤのような高い山や南極、深い海でも見つかる。

体長は1ミリメートルにも満たず、顕微(けんび)鏡でないと見えないよ。寿命は1カ月から1年といわれていて、ふみつけたらかんたんに死んでしまう。でも、周りに水がなくなって体が縮んで「たる」のような「乾眠(かんみん)」状態になると、不死身の力を発揮する。

30年以上冷凍(れいとう)されていても、からからに干からびた状態で9年間放っておいても、水をかけると復活して動き出した。ある博物館に保管されていた130年前のコケに水をかけると、ひからびたたる状のクマムシがもとに戻ったそうだ。

たるの状態だと、セ氏150度くらいの熱にも、マイナス273度というもうれつな寒さにも耐(た)えられる。7万5000気圧という地球上ではありえないような高い圧力でもへっちゃらだ。人があびると即死してしまうような強い放射線でも死なない。空気のない宇宙空間に10日間おいても、地球に戻ってきて水をかけると復活した。

クマムシはたるの状態になると、体内の水分がほとんどなくなって、生命活動を止める。生きているのか死んでいるのかわからない状態だ。ふつうの生物の細胞はこんな状態ではこわれてしまう。よくわかっていないけど、クマムシの体内には特殊(とくしゅ)なたんぱく質があって、細胞を守っているらしい。

不死身のクマムシは身の回りにいるんだ。探せば見つけられるよ。例えば、道ばたなどにあるコケ。表面が銀色に見えるギンゴケという種類にすんでいることが多い。

土の上にある青々としたコケよりも、コンクリートや石などの上に生えたコケの方がクマムシを見つけやすい。駐車(ちゅうしゃ)場のアスファルトのすきまやマンホールのふたのふちに生えているコケがオススメだ。晴れが続いた昼間に、乾(かわ)ききったコケを探そう。

コケを見つけたらスプーンや割りばしで採取する。このときクマムシはたるの状態なので、水につけてよみがえらせよう。コケの生えている方を下にむけて、水の入った容器につける。3時間以上そのままにしておこう。最後に割りばしでコケを振ってクマムシを水に落とす。

容器の底の方にたまった水をスポイトですくい、スライドガラスに1~2滴(てき)たらして顕微鏡で観察しよう。倍率が50倍くらいあればクマムシが見えるよ。数千円で売っている顕微鏡もあるから、クマムシを見たい人はおこづかいで買っちゃおう。

ただカブトムシなどとちがって、クマムシを飼育するのは難しい。観察した後はコケなどに逃がしてあげよう。

■「乾きの力」可能性秘める

博士からひとこと 不死身の生物はクマムシ以外にもいる。例えばアフリカにいるネムリユスリカという昆虫の幼虫(ようちゅう)は乾眠(かんみん)状態になる。こうした生物の秘密を探る研究はいろいろなことに役立つと考えられている。
例えば、からからに乾(かわ)いても復活する仕組みがわかれば、動物の細胞を乾燥(かんそう)させて保存できるようになる。今は凍結(とうけつ)して保存しているから、電気代や手間がかかる。ひょっとしたら、手術に必要な血液や臓器(ぞうき)をかんたんに保管できるようになるかもしれない。魚や肉といった食べ物の保存にも応用できると期待されているよ。

(取材協力=堀川大樹・慶応義塾大学先端生命科学研究所特任講師)

[日経プラスワン2016年5月14日付]