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ニッキィの大疑問

待機児童なぜ減らない? ニーズ増え、整備追いつかず

2016/5/9 日本経済新聞 夕刊

 保育所に入れない「待機児童」が問題になっているわね。政府や自治体もいろいろ対策を取っているようだけど、なぜ待機児童は減らないのかな。

 待機児童問題をテーマに、堀江貴子さん(41)と西出祐未子さん(30)が辻本浩子編集委員の話を聞いた。

 待機児童への関心が高まっていますね。

 「きっかけになったのは、2月15日付でインターネットに公開された匿名のブログです。『保育園落ちた日本死ね』という記事には、子どもを保育所に入れることができなかった母親の不満がつづられています。これが衆院予算委員会で取り上げられ、騒ぎが大きくなりました。母親たちが国会前でデモをしたり、塩崎恭久厚生労働相に待機児童解消を求める2万7682人分の署名を手渡したりする事態になりました」

 「慌てた政府は火消しに躍起となり、3月28日には厚生労働省が臨時的な受け入れ強化など『待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について』を発表しました。しかし、急な発表だけに、内容は十分とはいえません。政府は5月に『ニッポン一億総活躍プラン』をとりまとめる予定です。どこまで具体的な施策が盛り込まれるかが、大きなポイントです」

 現状はどうなっていますか。

 「2015年4月時点の待機児童の人数は、全国で2万3167人でした。10年度をピークに少しずつ減っていたのですが、5年ぶりに増加に転じました。政府や地方自治体が何もしていなかったわけではありません。安倍晋三首相は13年に『女性の活躍』を成長戦略の柱に掲げ、17年度末までに保育の受け皿を40万人分増やす計画を打ち出しました。15年には目標を50万人分に引き上げています。実際、保育所などの受け入れ枠は14年度だけで14万人分以上増えました。にもかかわらず待機児童が増えてしまったのです」

 なぜ減らないのでしょうか。

 「保育のニーズが高まっていることが最大の理由です。働く女性が増え、子どもを産んだ後も働き続けたいと考える女性も増えています。その思いに整備が追いついていないのです。特に、育児休業を終えて職場に復帰する母親が多い1歳児は、希望が集中して厳しい状況です」

 「そもそも、統計上の待機児童の数自体が『氷山の一角』だという問題もあります。たとえば、自宅に近い特定の園のみを希望していたり、母親が求職活動をやめてしまったりすると、待機児童としてカウントされなくなるのです。東京都の『認証保育所』など、自治体独自の施設に入った場合も同様です。こうした『除外された子ども』の数は約6万人にも達します。数字に表れない利用希望が多いため、いつまでたっても待機児童が減らないのです」

 減らすにはどうしたらよいですか。

 「あらゆる手を使って整備を急ぐ必要があります。15年度から少人数を預かる小規模保育なども新たに認可対象になりました。自治体が地域の実情に合わせて上手に組み合わせ、必要に応じ一度立てた計画でも見直していくことが欠かせません。その際、企業の力を生かすことが必要です。株式会社が保育所を運営することは可能ですが、自治体によってはまだ後ろ向きです。幼稚園と保育所の機能を併せ持つ『認定こども園』を増やしたり、幼稚園で子どもを預かる時間を延ばしたりすることも効果的でしょう」

 「人材と予算の確保も欠かせません。民間の保育士の給与は産業界の平均と比べて低いのが実情で『子どもが好きだから』という理由だけでは長期間働き続けることが難しくなっています。日本は国内総生産(GDP)に占める保育など家族向け支出の割合が高くありません。社会保障費は高齢者向けへの支出に偏りがちです。次世代を担う子どもたちにもっと予算を振り向けなければなりません」

 最近、保育所の新設計画が地元住民の反対で取りやめになったというニュースを聞きました。

 「子どもの声がうるさいとか、送り迎えの自転車がたくさん走ると事故が心配、などという理由で反対運動はあちこちで起きています。静かで穏やかな暮らしを守りたい気持ちもわかりますが、自治体などが丁寧に説明し、子育て支援策への社会全体の理解を深めることも必要になっています」

■ちょっとウンチク
90年代から問題、進まぬ改善
 待機児童の問題は昨日今日の話ではない。1990年代半ばからずっと続いている問題だ。95年4月時点の待機児童の人数は、約2万8000人だった。その後も高い水準が続いている。
 この間、さまざまな対策が打ち出されてきた。94年12月に初の少子化対策として策定された「エンゼルプラン」、2001年に小泉純一郎首相(当時)が掲げた「待機児童ゼロ作戦」などだ。だが予算不足などもあり、十分な効果を上げることはできなかった。
 少子化は進んでいるが、保育所を利用する子どもの数は94年の約159万人から年々増えている。15年には小規模保育など新しい公的なサービスを含め約237万人にまでなった。とりわけ1、2歳児の増加が目立つ。
 厚生労働省は17年度末には1、2歳児の48%が保育サービスを利用すると見込む。今は待機児童をどう解消するかに社会の目が向いているが、今後は子どもの健やかな成長をどう支えるかという「質」の面に重点が移りそうだ。
(編集委員 辻本浩子)
■今回のニッキィ
堀江 貴子さん 金融機関勤務。最近、会社の茶道部で月2回、表千家の作法を習い始めた。「先生から一度も注意されず終われるようにするのが当面の目標です」
西出 祐未子さん 商業施設の販売促進を担当。台湾が大好きでよく旅行する。「インターネットで台湾エバー航空のウェブサイトを毎日チェックしています」

[日本経済新聞夕刊2016年5月9日付]

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