お勧めは? 比べる楽しみも
ビールを飲むのが気持ちがよい時期。どうせなら、大勢の人と味わいを楽しんでみてはいかが。手作り感のあるクラフトビールの人気を追い風に、近年、国内で様々なビールを一度に楽しめるイベントが開かれるようになった。多くは春から秋の開催だ。ビールに詳しい専門家に、行って楽しいおすすめのビールフェスティバルを聞いた。
上位に並んだのは、全国の地ビールが一堂にそろう大規模なイベント。100種類以上をそろえるところもあり、飲んでみたいと思っていたビールがきっと味わえる。
ビールの作り手が来たり、グラスに注いでくれたりするイベントもある。作り手におすすめのビールを聞くなどすれば、一杯がよりおいしく感じられるだろう。
もちろん、料理の屋台も数多く出ている。その土地ならではの名産品はもちろん、各地から取りそろえたおいしい料理や、つまみが楽しめる。友人同士や家族連れで、のんびり過ごすのにもぴったりだ。飲み過ぎないよう気をつけて、ビールを堪能しよう。
150種以上、地元食材をつまみに(岩手県一関市)
今年で19回目を迎える地ビールフェスティバルの草分け。地元の「いわて蔵ビール」はもとより、150種類以上の地ビールが集まり「ほぼ全都道府県のクラフトビールが飲める」(片山貢さん)。ナスやピーマンなどの地元食材のPRにも力を入れており、「地域密着感のあふれたお祭りらしい雰囲気が魅力」(佐藤翔平さん)、「東北の野菜やお米を使ったフードが充実」(松下奈津子さん)という。鶏肉を使う名物「いちのせきハラミ焼」や、豚すね肉の煮込みなど工夫を凝らした料理の屋台が並ぶ。ソフトドリンクやジェラートもあり、家族連れにも良い。
(1)8月19~21日(2)一関文化センター前広場(JR一ノ関駅から徒歩5分)(3)http://www.ichitabi.jp/event/data.php?no=64&m=8
芝生にシート広げのびのびと(さいたま市)
北海道から沖縄までの国内と海外のものも合わせ、300種類以上のクラフトビールがそろう。ほぼすべての店舗で飲み比べセットを提供しており、「一度に多くのビールを楽しむことができる」(木暮亮さん)。会場は新緑のケヤキ並木に包まれ、「芝生にレジャーシートを広げて飲める開放感も良い」(那須正樹さん)。参加ブルワリーによる限定ビールもある。松阪牛のホルモン焼きから宇都宮のギョーザ、日本海のアワビまで全国各地から酒のさかなが大集合。例年秋にも開催しており、今年は9月に開く予定。
(1)5月11~15日(2)さいたま新都心けやきひろば(JRさいたま新都心駅徒歩すぐ)(3)さいたまアリーナ電話048・601・1122
入場料払えば試飲何度も(東京・目黒)
入場料(前売り4800円、当日5200円)を払うと専用グラスをもらえ、50ミリリットルずつ何杯でも試飲できる。「クラフトビールの入門にぴったり」(福本成美さん)だ。「日本を中心としたクラフトビールを一度に幅広く堪能できるお得なイベント」(佐藤さん)。その年のアジア・オセアニア地域のビールコンテスト「アジア・ビアカップ」に入賞したビールも飲める。「初心者にもプロにもおすすめ」(山岡茂和さん)だ。各日1000人限定。大阪(7月15~17日)、横浜(9月17~19日)でも開かれる。
(1)6月4、5日(2)恵比寿ガーデンプレイス「ザ・ガーデンホール」(JR・地下鉄恵比寿駅徒歩5分)(3)http://beerfes.jp/
アーケードぶらり、飲んで食べて(京都市)
商店街で開かれるビールイベント。地元・京都の「一乗寺ブリュワリー」など、西日本を中心に35の醸造所が参加する。会場は二条城近くの約800メートルの三条会商店街で「アーケードのフードを食べ歩きしながら飲める」(コウゴアヤコさん)。商店街の店がビールに合う食事を100円台から提供している。「商店街をまき込んでの企画が良い」(牛窪学さん)
(1)5月14日(2)三条会商店街アーケード(千本三条~堀川三条、地下鉄二条城前駅から徒歩3分、阪急大宮駅から徒歩10分)(3)http://www.kyoto-beer.com/
ブリュッセルのにぎわい、日本に(東京・港)
ベルギーのビールを集めたフェスティバル。本国のブリュッセルでも開かれるビール祭りの日本版だ。「ベルギービールの中でも世界的に広く認知されている銘柄が多く登場するので、初心者にもおすすめ」(佐藤さん)。110種類以上のビールと、フライドポテト、パテなどのベルギー料理が楽しめる。名古屋(開催中、8日まで)、福岡(5月12~15日)など様々な都市でもある。
(1)9月16~25日(2)六本木ヒルズアリーナ(地下鉄六本木駅徒歩4分)(3)https://belgianbeerweekend.jp/ja
中四国で最大、名物とともに(広島市)
中国・四国地方では最大のイベント。「ブルワー(醸造士)が来場して直接ビールを注ぐのが特徴」(山本祐輔さん)。食事も充実しており、広島産のかきや呉の練り物「がんす」のほか、様々な名産が集まる。瀬戸内地方のかんきつなどが買える市場コーナーもあり、ビールを飲む以外の楽しみもある。
(1)今年は終了、次回は2017年4月中旬を予定(2)旧広島市民球場跡地(市内電車原爆ドーム前駅すぐ)(3)http://www.golden-garden.tv/beerfesta/index.html
19世紀前半から続くドイツ・ミュンヘンのビール祭り「オクトーバーフェスト」を参考に2003年から開いている。赤レンガ倉庫に囲まれた空間に、本場のビールとソーセージ・ハムなどがそろう。「楽団の生演奏があり、ミュンヘンの雰囲気を味わえる」(渡辺隆さん)。ドイツの「乾杯の歌」を歌って盛り上がろう。(1)10月上旬~中旬(2)横浜赤レンガ倉庫イベント広場(みなとみらい線馬車道駅または日本大通り駅から徒歩6分)(3)http://www.yokohama-akarenga.jp/utility/inquiry
関西の23のブルワリーのビール約100種類を紹介。「ここでしか飲めないビールもある」(山岡さん)。関西のビアパブも出店、ビールに合う一押し料理を味わえる。(1)5月28、29日(2)湊町リバープレイス(大阪市営地下鉄なんば駅徒歩5分)(3)http://craftbeerlive.com/
会場は兼六園、金沢城公園のそばの広場。ビールと金沢の和洋中様々な人気店の料理が集う。「気持ちがよく、地元のフードも味わえて楽しい」(福本さん)。(1)10月1、2日(2)しいのき迎賓館(バス停香林坊から徒歩5分)(3)http://craftbeer-kanazawa.info/
大学生が中心になって運営する。1杯300円からと手ごろな点も魅力。(1)9月30日~10月2日(2)つくばセンター広場(つくばエクスプレスつくば駅徒歩1分)(3)https://twitter.com/BeerfesTsukuba?lang=ja
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表の見方 数字は選者の評価を点数にした。フェスティバル名と開催地(1)今年の開催日程(2)会場(3)公式サイト・連絡先
調査の方法 専門家の協力を仰ぎ、これまでに開催実績を重ねている日本全国のビールフェスティバル約20をリスト化。ビールフェスに詳しい専門家11人に、自身が運営に関わっているものは外した上で、1~10位まで選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)
▽牛窪学(ビアパブ広報)▽片山貢(ビアテイスター)▽木暮亮(ビアジャーナリスト)▽コウゴアヤコ(webサイト「世界ぐるっとビール旅」)▽佐藤翔平(ビアジャーナリスト)▽那須正樹(地ビールバー「まる麦」)▽福本成美(リレイ取締役)▽松下奈津子(ビアジャーナリスト)▽山岡茂和(山岡酒店)▽山本祐輔(日本地ビール協会理事長)▽渡辺隆(同理事)
[日経プラスワン2016年5月7日付]