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阪本順治・是枝裕和 50代監督が団地を撮る

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NIKKEI STYLE

阪本順治と是枝裕和。50代の映画監督2人が団地を舞台に新作を撮った。かつて高度経済成長の象徴であり、現在の少子高齢化も如実に反映する団地という場所。2人はそこに何を見たのか。

「万博があり、ニュータウンができた。巨大な団地に家族で住むことが経済発展の一つの形だった。4人家族で住むには少し狭いが、近代的で、笑いや語らいもある。人々が『中流』に移行できる景色がそこにあった」

「団地」(6月4日公開)の阪本順治監督はそう語る。1958年堺市生まれの阪本や同年生まれの主演・藤山直美にとって、泉北や千里など子どもの頃に近所に開発された大阪のニュータウンは輝かしい存在だった。「工業化が進み、公害の真っただ中の時代。団地は日本の次の未来を象徴する場所だった」と阪本。

時間止まった街

「それが50年たって、時間が止まったようなところになっている。独り暮らしの人が増え、デイサービスの送迎の車が来る。エレベーターがないので、上階から人が住まなくなる。店が撤退し、過疎地と同じ悩みを抱えている。その変遷に興味があった」

「団地」の主人公は藤山と岸部一徳の夫婦。ある事情で漢方薬局をたたみ、半年前に引っ越してきた。自治会長をはじめとした古い団地の住民は噂好き。新参者についてあらぬ噂が飛び交う。

「静かに暮らしたいと思った夫婦が選んだのが団地。時代から取り残されたような場所だが、今も人の匂いや生活の匂いはある。抱えている問題を少し軽くできると思ったのではないか」

阪本が撮ろうとしたのはそんな団地の「匂い」だ。日本映画伝統の長屋もののようであり、異星人が登場することからSFのようでもあるが、それが団地という場所で展開するのが面白い。

「部屋は区分けされていても、ご近所の密接感がある。壁一つ隔てて集まって住んでいる。団地という風景だからできたことはたくさんある」

「筒井康隆や星新一の小説のように日常がひっくり返るような世界観を提示したいと思った。時空を超える要素を持ち込むことで、藤山直美がどういう旅をするか? それを通して『大切な人との別れ』というもう一つのテーマも浮かんでくる。これは人の心根の話。だけど地べたの話だけでは言えないことがある」

想定と違う現在

「この映画は、なりたかった大人になれなかった人たちの話。団地で撮ったのは、団地もそうだから。造られたころ想定していたのとは違うところに着地してしまった」

是枝裕和監督「海よりもまだ深く」(5月21日公開)で阿部寛が演じる主人公はバツイチの中年男。若き日に文学賞をとったが、その後は鳴かず飛ばずで、探偵の仕事をしている。今も団地で独り暮らしの老母(樹木希林)も、愛想を尽かして別れた妻(真木よう子)も「こんなはずじゃなかった」と思っている。そんな3人が母の住む団地で台風の一夜を過ごす。

この物語を62年生まれの是枝は自分が9歳から28歳まで住んだ東京都清瀬市の団地で撮影した。「僕の原風景だ」という。

「引っ越してきた時、母がベランダで『これで台風の心配をしなくて済むわ!』と言ったのを鮮明に覚えている」。それまでの練馬の家では毎年秋に台風が来るたびに荷物をまとめて近所の教会に避難した。「井戸水が水道に、トイレが水洗に。生活が一気に近代化した。いつも友だちが周りにいて、芝生で遊べた。驚きと安心感があった」

00年に父を亡くし、独り暮らしの母をよく訪ねるようになった。団地は静かに歳を重ねていた。

「子供が減り、広場の滑り台などが撤去され、老人の憩いの場に変わっていった。今のうちに撮っておきたいと思った」

撮影中、発見があった。

「全部人工的なものなのに、アングルを決めて、人が歩いてみると、意外と情感をもっている」

「樹木が大きくなった。雑木林を切って無機質なものを造った場所が、老人の単身世帯ばかりになったころ、再び自然に覆われている。人間の営みって何だろうと考えさせられる場所になった」

原風景を撮り続ける映画作家は少なくないが、東京生まれの是枝にはこれまで「人間が風景から切り離された」という感覚の方がリアルだった。それが少し変わった。

「団地は郷土から切り離された人が住み、出ていき、新陳代謝を繰り返すもの。しかし定住化によって、住んでいる人も、出て行った人も、郷愁を感じ始めている。ここまで人工的なものに郷愁を感じるのは面白い」

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞朝刊2016年4月30日付]

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