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五輪「海の森」は江東区? 大田区? 住所巡り対立続く

2017/1/12付 日本経済新聞 朝刊

水上スポーツに親しめる水辺の憩いの場とするボート・カヌー会場の海の森水上競技場

東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー会場「海の森水上競技場」の建設が決まった東京湾で、暗礁に乗り上げた問題がある。競技場を含む埋め立て地の帰属を巡り、江東区と大田区が対立。昨年4月に始めた協議は平行線のままで、都知事による調停や訴訟にもつれ込む可能性が出てきた。関係者は「このままでは五輪に間に合わない」と危機感を強める。

「埋め立てで苦労したのはそちらだけではない」。昨年11月、都庁の一室。両区の担当者がテーブルを挟み意見をぶつけ合った。

争っているのは未完成部分も含めて1000ヘクタール弱の埋め立て地「中央防波堤」(中防)の帰属だ。埋め立てが始まった1973年から40年以上、膠着状態が続いていたが、2013年に東京五輪の開催が決定。帰属を明確にしようとする機運が高まった。

両区長が「前向きに協議を進める」と確認したのは昨春。月1回の協議を重ねてきたが、「議論は平行線」「落としどころを探る雰囲気ではない」と担当者は険しい表情を見せる。

大田区は境界画定で歴史的沿革を重視する最高裁判例を論拠に、「中防の場所にあったノリの漁場で多くの区民が生計を立てていた」と主張。江東区は埋め立て地に向かうゴミ運搬車の多くが同区を通り、臭いなどで苦しんだ経緯を強調する。

五輪組織委員会のホームページによると「海の森」の所在地は江東区青海3丁目地先。地先は「その場所の近く」という意味で、住所が同区に決まったわけではない。

中防には人は住まず、税収増にはならない。それでも両区が譲らないのは、「五輪遺産(レガシー)」のブランド力を生かして区の沿岸部と一体開発し、雇用増や観光振興につなげたいからだ。

江東区は町づくりの計画書で同区南端の若洲と中防を豊かな自然を感じられる「オアシスゾーン」と位置づける。大田区は羽田空港と港湾部を結ぶ物流業者の集積地などに使う計画を温める。

当事者間の協議でまとまらなければ、都知事に調停を申請する方法がある。その上で調停案をいずれかが不服として受け入れない場合、境界画定訴訟に発展する可能性がある。関係者からは「協議で決着がつく可能性は低い」「訴訟に発展すれば東京五輪に間に合わない」との声が上がる。そうなると両区が思い描く五輪後の活用計画は実現しなくなる。

元都副知事の青山●(にんべんに八の下に月)・明治大大学院教授は「両区にとって橋やトンネルでつながる中防は沿岸部開発の面で大きな意味を持つ。『海の森』は貴重な観光資源になり、帰属はメンツだけでなく切実な問題だ」と指摘。「司法に委ねるより、東京の発展を一番に考え当事者間で最適な線引きを決めてほしい」としている。

■境界未確定地 なお171市町村

地方自治法は自治体間の境界について「従来の区域による」とし、明確な規定を設けていない。東京湾の中央防波堤のようにかつて海だった埋め立て地の場合、歴史的沿革や住民の便益などを勘案し定めるのが一般的だ。

境界を定めなければならないという決まりもなく、国土地理院によると、境界未画定地は富士山頂をはじめ、全国の171市区町村にあるという。同法は関係自治体間で市町村境に争いがあれば知事が裁定すると定める。

お台場として知られる「13号埋め立て地」のケースでは江東、港、品川の3区が都知事に調停を申請。1982年、専有面積を江東が75%、港が17%、品川が8%とする調停案を3区が受け入れた。調停案が不服なら境界画定訴訟を起こすことができる。

[日本経済新聞2017年1月12日付朝刊]

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