五輪レガシーいまや重荷に 長野ボブスレー競技場競技人口150人 市民「税の無駄」

コースの塗装がはげ落ちるボブスレー・リュージュ競技場「スパイラル」(11月8日、長野市)
コースの塗装がはげ落ちるボブスレー・リュージュ競技場「スパイラル」(11月8日、長野市)

1998年の長野冬季五輪ボブスレー・リュージュの競技会場が存廃の岐路に立たされている。利用料収入は年間700万円だが、長野市は年間1億2千万円の維持管理費を負担しており、市民から「税金の無駄」との声が上がる。市は来年中にも結論を出す方針。20年前の遺産(レガシー)は、2020年の東京五輪・パラリンピックの施設見直し議論に教訓を投げかけている。

JR長野駅から車で30分ほどの山あいに「ボブスレー・リュージュパーク」(通称・スパイラル)がある。市が101億円を投じて建設したコースは全長約1.7キロ。ムラがない氷を作れる最先端の冷却設備を持ち、ソリのコースで珍しい「上り」があるのが売りだ。

だが、コースはあちこちで塗装が剥げ、ソリの飛び出しを防ぐ木製の覆いは腐食が進む。市内で物産店を営む女性(70)は「施設の利用目的で訪れる客はほとんどいない。多額の維持費に市民の税金が使われるのはおかしい」と訴える。

存廃議論が表面化したのは今年10月。市が地元住民向けの会合で示した今後10年間の負担額の試算がきっかけだ。

市によると、施設の維持管理や改修にかかる費用は年間2億2千万円。うち1億円は国の負担だが18年の平昌五輪までとされ、更新は未定だ。国の支援なく現状通り運営すれば市の負担は今後10年間で計31億2千万円。全面休止した場合は冷却設備からアンモニアを抜く作業などに8千万円。廃止するには解体費などに13億5千万円かかる。

上空から見たスパイラルのコース

国内のソリ競技人口は約150人。競技シーズンが11月下旬からの約2カ月間と短く、15年度の利用者は見学者を含め約6300人のみ。同じ長野冬季五輪で建設された施設の多くは赤字だが、スパイラルの赤字は突出しており、14年度の外部監査では「市の負担において当該施設を維持していくことは困難」などと指摘された。同市の下平嗣・スポーツ課長は「五輪を呼ぶには競技会場が必要だった」と強調。五輪自体は地域活性化に貢献したが、下平課長は「一自治体が維持するのは難しい施設だった」と述べるにとどまった。

競技団体は存続を求めており、長野県ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の内田秀人理事長は「施設がなくなれば競技そのものの存続が難しくなる」と訴える。

市は今後、有識者でつくる検討委員会で存廃を議論するほか、競技団体や市民から意見を聞き、結論を出す方針だ。

五輪施設を巡っては20年東京五輪・パラリンピックでも建設費や地方移転の議論が紛糾している。ボートとカヌー・スプリントの「海の森水上競技場」は整備費が招致段階の69億円から一時491億円まで膨らんだ。約300億円まで削減できる見通しだが、五輪後の収支は年間2億円の赤字となるという。

1972年の札幌冬季五輪で建設されたボブスレー専用コース(札幌市)も維持費がかさみ、2000年に閉鎖した。スポーツを通じた地域振興に詳しい信州大の橋本純一教授は「競技施設が地域経済にとって負の遺産になることは東京五輪でも十分起こりうる。スパイラルの今後については市民の記憶や誇りなどを踏まえ、慎重な議論が必要だ」としている。