まずは敵を知ることから。測定キットを直販しているリオンテック(東京都立川市)河野通泰社長を訪ねた。
今の日本家屋にいるのは「人を刺さないコナヒョウダニやヤケヒョウダニなどだ」と河野さん。そのフンや死骸、抜け殻がぜんそくやアトピー皮膚炎を引き起こすアレルゲンになるという。測定キットでは、ダニやダニアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)の汚染度がわかる。
学校内のダニ、ダニアレルゲン検査に使う「学校用マイティチェッカー」(5回分、7560円)は付属の袋を掃除機に取り付けて1平方メートルを1分間吸引し、そこへ液剤を入れてもみ、チェッカーを浸すと汚染度が分かるという。
一般的な手入れでどの程度、ダニやアレルゲンが減るのか。最も気になる寝具を調べたい。一般家庭の事情にも詳しい東京環境アレルギー研究所(東京都文京区)所長の白井秀治さんに相談し、測定方法を考えた。
10月上旬、2枚の布団を4つのブロックに分け、その半分で初期状態を測定。残る半分を(1)天日干し(4時間)(2)天日干しして布団をたたく(5分)(3)天日干しの後、掃除機をかける(5分)(4)天日干しと布団たたき、掃除機をかける――で手入れして成果を比べた。
我が家では夏は畳に敷布団用マットレスを敷き、布団や麻マット、麻シーツを重ねて寝る。ダニの温床にならないように湿気対策に気をつけ、マットやシーツだけは洗濯しやすくしていた。ただ、掃除機はたまにかける程度だ。
初期状態は4ブロックとも汚染度が最も高い++で「通常より多く除去が必要」だった。1平方メートルに350匹いると思うと全身がかゆくなった。ところが白井さんは「日本の気候では当たり前。普通ですよ」。救われた。
まずは布団を天日干しにした。途中で裏表、左右を入れ替えて日照条件が同じになるようにして、(2)と(4)は手が痛くなるまでたたいた。日が沈み出したところで(2)と(4)はさらにたたき、(3)と(4)は5分間丁寧に掃除機をかけた。
結果は(1)と(2)は++のまま。(3)は+に1段階レベルが下がり、(4)は一気に-(マイナス)まで低下した。「布団をたたくと布団の奥に潜むアレルゲンが表面に出てくる」と白井さん。だから布団たたきは、単独では逆効果。掃除機がけと組み合わせて初めて意味があるということだ。
布団たたきと掃除機がけの組み合わせが有効と分かった。一方、「55度超で20分間加熱しないとダニは死なない」ため、天日干しは効果が薄い。また、ダニが卵からかえり、成虫になって産卵するまで5週間前後。一時的に激減しても、卵が残ればアレルゲンは増える。「週1回1平方メートルあたり20秒ほど掃除機をかけるのが目安」だそうだ。