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まほろ駅前狂騒曲 人間臭さ引き出す演出力

2014/10/19 日本経済新聞 夕刊

東京近郊の駅ビルのある街で便利屋を営む三十路の男・多田(瑛太)。そこに転がり込んだ中学の同級生・行天(松田龍平)。曲折を経て生まれ育った街に戻った2人のバディムービー(相棒映画)だ。三浦しをん原作のシリーズもので、第1作「まほろ駅前多田便利軒」(2011年)に続き、大森立嗣が監督した。

大みそかの夜、多田に仕事の電話が入る。依頼主は行天の別れた妻・凪子(本上まなみ)。「仕事で海外に行く間、娘を預かって」という。凪子は同性愛者。娘は行天が精子を提供し、人工授精で生まれた子だ。

ただでさえ子供嫌いの行天が子守の仕事を承諾するわけがない。多田は娘の正体を隠し、何とか同意を得るが、すぐにばれて、行天は激怒。それでも3人の共同生活は始まった。生後間もない子を亡くして離婚した多田。母親に虐待された行天。2人は苦手な父親役を果たそうと努力する。

その一方で調査を依頼された無農薬野菜生産団体を巡るトラブルが降りかかる。団体の前身はカルト教団で、行天の母はその信者だった。団体代表の小林(永瀬正敏)の狙いは……。

便利屋への依頼人はワケありの人物ばかり。夫を亡くした食堂の女主人(真木よう子)も、間引き運転を監視する老人(麿赤兒)も。ワケありだらけのまほろという街があり、その中心に多田と行天がいる。

2人は彼らに振り回されながら、時に果敢に行動する。人生にくたびれた2人だが、すっかり希望を失ったわけではない。どっちつかずの人間臭さがこのシリーズの味であり、大森の演出力がそれを引き出す。

人間誰しも荷物を背負っている。みなワケありだ。大森はそれをくだくだ説明せず、具体的な映像で一瞬に見せる。「さよなら渓谷」など重い作品の一方で、こんな娯楽作も撮る。娯楽作でありながらえらく人間臭い。2時間4分。

★★★★

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2014年10月17日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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