指先から届け善意の心 アプリで気張らず社会貢献
途上国支援・街の清掃…
チケット購入で寄付
9月23日にサイバードが公開した「NAZO」は、謎を解きながら読んでいく絵本のようなゲームアプリだ。「アプリを通して、小さな頃に夢中になった宝探しの楽しさを世界中の子どもに伝えたい。35年前からやりたかったプロジェクトだ」と語る堀主知ロバート・サイバード社長はこのアプリにただのゲームで終わらない、ユニークなしかけを入れた。
ゲームを進め、最後の謎を解くまで到達すると、グラミー賞受賞歴を持つ世界的指揮者グスターボ・ドゥダメル氏ら著名人が実際に提供する「宝物」を得るチャンスが与えられる。例えば同氏が指揮するオーケストラに1日特別入団する権利などだ。ベネズエラ発の音楽教育プログラムを日本で行うエル・システマジャパン(福島県相馬市)に寄付できるようにもなっている。
NAZOでは物語を読み進めるための「チケット」が必要。利用者は1日5枚の無料チケットを得て、1話進むごとに1枚消費する。早く先に進みたい場合はチケットを購入する。ここから「donation(ドネーション)」を選ぶと自分で決めた金額が寄付される仕組みだ。
NPO法人のテーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT、東京・港)は、身近な「食」から、飢餓に苦しむ国へ寄付できるアプリを公開している。日々の食事を撮影し、アプリから公開・共有すると1円の寄付ができる。他の利用者が公開した写真に「ヘルシー」もしくは「食べたい」ボタンを押すと、1ポイントもらえる。5ポイントたまると1円の寄付になり、20円分たまると、学校給食の1食分相当の寄付になる。実際は、趣旨に賛同する企業が寄付金を提供する。
もともとTFTは、途上国の学校給食へ寄付する活動をしている。提携レストランや社員食堂で対象の食事メニューや食品を購入すると、その金額から一部、寄付される仕組みだ。事務局長の安東迪子氏によると「提携する店舗は近くにないが、この取り組みに参加したい」という要望が多かったことからアプリを開発したという。ダウンロード数は約4万5000(9月23日現在)に上る。「アプリを使うことで子どもの給食になるのがうれしい」――。利用者の満足度は高い。
自治体・企業も導入
善意を共有することで行動を促すアプリはほかにもある。「世界中をきれいにしたい」という思いを基にしたゴミ拾い支援アプリ「PIRIKA(ピリカ)」だ。拾ったゴミを撮影してアプリに掲載、共有するだけのシンプルなもの。すでに70カ国でダウンロードされている。
ピリカ社長の小嶌不二夫氏は、PIRIKAを通して「平均して約1万個のゴミが毎日拾われている」という。自治体や大手企業がレクリエーションとして導入する動きもあり、利用者が楽しみながらゴミ拾いできる。
寄付や社会貢献活動に詳しいジャスト・ギビング・ジャパン代表理事の佐藤大吾氏によると、「アプリを通して寄付行動をする場合、どこに寄付され、どのように使われるか、まず自分で調べることが大切」という。例えば、TFTでは食事の写真を登録すると、給食を食べる途上国の子どもたちの写真を表示する。自分の寄付金がしっかり届いていると利用者が実感できるよう可視化している。
納得して社会貢献活動を続けるきっかけややりがいをスマホアプリが助ける。気張らず試してはいかがだろうか。
(電子報道部 松本千恵)
[日本経済新聞夕刊2014年10月16日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。