別荘 ホセ・ドノソ著躍動するホラ話 余韻痛烈

2014/10/16付
(現代企画室・3600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

ラテンアメリカ文学ブームの中核をなした作家の代表作。紹介までの時差はあったが、ついに登場。ドノソといえば『夜のみだらな鳥』。だが、それ以上に圧巻な一冊。邦訳が遅れたのは、ひとえにこの愛想のないタイトルゆえにか?

 夜よりもみだら、そして、優雅にグロテスクな虚構の城。

 いつの時代か、どこの地方か。金箔の製造と輸出で巨額の財をなす領主の一族。広大な屋敷をかまえ、血縁の子供たちが数十人、召使は数知れず。原住民を奴隷労働に使うが、奥地には未開の「人食い人種」が棲息(せいそく)するらしい。交易相手は赤毛の外国人。文明世界からやってくる彼らは最も野蛮な人種だ。

 中心人物はいない。領主たち、その子供たち、召使、原住民と、焦点は移り変わる。作者は「これはホラ話だ」と、しつこく念を押す。この世はなべて「別荘」暮らし。寓意(ぐうい)は読み取れるが、物語の躍動に翻弄されるうち、理屈はどうでもよくなってくる。小説は「語り」=騙(かた)りがすべて。

 だらだらと数ページずつ読むのもよし、一気に500ページ余を読みきってしまうのもよし。余韻の深さは痛烈だ。寺尾隆吉訳。

★★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2014年10月15日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

別荘 (ロス・クラシコス)

著者:ホセ ドノソ
出版:現代企画室
価格:3,888円(税込み)