新国立劇場「パルジファル」清涼感残る非凡な演出

新国立劇場の新シーズンのオープニングは、オペラ部門芸術監督に就任した飯守泰次郎の指揮でワーグナー「パルジファル」。主要キャストに実力者が揃い、演出界の重鎮ハリー・クプファーを起用するなど、意気込みが伝わってくる。

パルジファル役のフランツ(右)とグルネマンツ役のトムリンソン=写真 堀田 力丸

舞台奥に向かって道がジグザグに延び、その表面をモニターが覆う。また聖槍(せいそう)の突端をかたどった巨大な刃が道を遮るように現れ、物語の端緒となった騎士団の王アムフォルタスの刺し傷を想起させる。モニター上の色彩の変化は登場人物の心理状況を象徴するとともに、照明との相乗効果でシャープな抽象空間を彩り、花の乙女の情景など随所で抜群の威力を発揮した。

第2幕後半では愚者から賢者へと覚醒するパルジファル(クリスティアン・フランツ)を謎の女クンドリーが誘惑するが、エヴェリン・ヘルリツィウスがこれを鬼気迫る歌唱で表現。アムフォルタスの苦悩を情熱的に演じたエギルス・シリンスや、淡々とした語り歌いを豊かに響かせた老騎士グルネマンツ役のジョン・トムリンソンの巧者ぶりも光る。女声合唱も舞台を美しく彩った。飯守は管弦楽(東京フィルハーモニー交響楽団)を端正に造形。響きが薄く、ワーグナーらしいうねりを生むには落ち着きすぎたが、終始透明感を保ち、長丁場を息の乱れなく乗り切った。

ワーグナー晩年の仏教への関心を踏まえ、結尾では道の最奥部に立つ僧侶たちがパルジファルらを導く。だが騎士団の中にはこれに従えない者もいる。煩悩や肉欲というテーマを押さえつつ、様々な解釈が可能な結末を、一服の清涼感をもって表した点は非凡である。しかし欧州演出チームには、仏僧の提示方法にもう一工夫望みたい。2日。

(音楽評論家 江藤 光紀)

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