2014/10/15

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りゅうきゅうの名の由来について大分市在住の料理研究家の高橋知子さんに聞いた。「諸説あります。豊後なば(シイタケ)山師が沖縄から伝えたという説や黒潮文化圏で漁業者の交流から伝わったという説のほか、漁師のまかない料理からという説、ゴマを使った料理に利久焼きなどがあって利久がなまったという説も聞いています。どれも確たる証拠がありません」

りゅうきゅう(左)とりゅうきゅう丼は鮮度が命という平岡せつ子さん(大分市の花邨)

このほか「たれに漬けた刺し身の見た目が海に浮かぶ島々のように見えた」という地名説も耳にした。

別府大学で民俗学を専門とする段上達雄教授は「沖縄に『りゅうきゅう』に当たる料理はないし、豊後なば山師は沖縄に行っていない」と話す。沖縄から伝わったのであれば鹿児島や宮崎にも「りゅうきゅう」があってもよいが、ないのも不思議だ。利久説については「『利久焼き』と語呂が似ているとの声もあった。話したら由来の一つに取り上げられるようなった」(こつこつ庵の松本会長)。

段上教授は「こじつけるなら、鮮魚をわざわざ遠いところから持ってきたので、遠い地方の名称をつけたのでは」と見立てる。

「りゅうきゅう」が明治以降、漁獲技術や冷蔵技術などが向上し、整備された交通網を使って輸送できるようになってから広まったのは確かだ。かつては海から離れた場所で生の魚を食べようとしたら、最初からしっかり漬けなければならなかったからだ。

きょうも大分を訪れて初めて「りゅうきゅう」を口にした人は「この名前のいわれってなんですか」とたずねることだろう。誰が付けたかはわからないが、うまいネーミングだと思う。一度味わえばその名前も忘れることはないのだから。

<マメ知識>ユニーク名称 ほかにも
 大分県には「りゅうきゅう」に似た料理がたくさんあり、それぞれがユニークなネーミングで興味深い。津久見市保戸島にはマグロ遠洋漁業の基地があり、漁師のまかない飯が発展したという「ひゅうが丼」がある。マグロをゴマだれベースで食べる。
 佐伯市ではブリやサバの漬けにお茶や出汁(だし)をかける「あつめし」が有名。
 杵築市の江戸時代から続く和食店、若栄屋が出す「うれしの」はゴマだれベースの鯛(たい)茶漬け。昔、殿様が食べて「うれしいのう」と言ったのが由来という。

(大分支局長 藤井利幸)

[日本経済新聞夕刊2014年10月14日付]

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