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エイズ、薬でコントロール 認知障害などの課題も

2014/10/11 日本経済新聞 夕刊

エイズは治療薬が進化してかつてのような死の病ではなくなり、普通の生活も問題なく送れるようになった。ただ、少量とはいえ原因ウイルスが体内に何年も居続ける「慢性疾患」となったことで認知障害などの新たな合併症の問題も判明しつつある。エイズとの闘いはこれからも続く。

今年3月、欧州で2年間にわたる大規模調査の結果が発表された。感染者らを対象にした研究で、コンドームを使わないことがあるカップル約800組を追跡した。

■感染拡大防止に

薬でウイルスが検出限界以下に抑えられている感染者の場合、同性・異性のどちらであってもパートナーにウイルスが移ることはなかった。「治療そのものが感染拡大防止になる」。専門家らは薬による封じ込めに自信を強めた。

治療を受けていない感染者がいる男女間の場合は1年間付き合うと感染してしまい、男性間ではよりリスクが高くなるといわれる。正しい知識の教育を踏まえて、きちんと治療をすることの意義が改めて認識された。

エイズウイルスが感染した免疫細胞のT細胞(米国立衛生研究所提供)

エイズウイルス(HIV)はさまざまな感染症の中でも奇妙で厄介だ。体内で遺伝子がどんどん変化し、約10分で姿が変わる。病原体から身を守る免疫システムは準備に約1カ月がかかり、うまく対抗できない。そしてウイルスは免疫系そのものも破壊していく。一度感染すると自然治癒が難しく、感染を防ぐワクチンもまだ開発途上だ。

感染後にウイルスを体内から完全に排除できた人はこれまで1人しかいない。白血病も患い、2007年にドイツで特殊な骨髄移植を受けた患者だ。米国では母子感染した女児「ミシシッピ・ベイビー」が出産直後からの薬の集中投与で一時的にウイルスが検出されなくなったが、結局再び見つかった。

体内からウイルスを追い出せないものの、増殖を抑えエイズの発症を防ぐことはできる。小型で飲みやすい錠剤や副作用が少ない薬が次々と登場している。毎日飲み続ければエイズを発症せず、健康な人と同じように年を重ねることができる。薬のおかげでエイズはコントロールできる慢性疾患になった。

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