ライフコラム

エコノ探偵団

訪日観光客増加 経済への波及効果は

2014/10/1 日本経済新聞 朝刊

「最近、街でよく外国人の旅行者を見かけます。政府は日本を訪れる外国人を増やそうとしていると聞きますが、狙いは何でしょうか」。女子学生の質問を聞いた探偵、深津明日香は「どんな効果があるのかしら」と調査を始めた。

■宿泊・食費 消費押し上げ

最初の訪問先は神戸牛ステーキの老舗、牛庵(東京都中央区銀座)。インターネットの口コミなどで評判になり、連日、外国人の観光客でにぎわっている。最近は来店客の5割以上が外国人だ。「神戸牛は忘れられない味。できればこの肉を持ち帰ってみんなに教えたい」(米国から来た夫妻)。「ネットで調べて来た。今まで食べた肉の中でベスト。友だちにも伝えたい」(台湾から来た2人)

店主の松野正雄さん(60)は「昨年夏ごろから外国人の観光客が急増し始めました。外国人に不安を感じさせないように笑顔で接しています」。英語や中国語のメニューを充実させ、神戸牛に関する質問には自ら英語で答えている。

「ネットでの情報発信、外国人客の受け入れ態勢の整備が欠かせません」。飲食店の情報をネットで提供する、ぐるなびの水野奈美さん(34)が話に加わった。「ぐるなび大学」で飲食店向けセミナーの講師を務める水野さんは、「お通し」の取り扱い、イスラム、ヒンズー教徒やベジタリアンらへの対応、看板の表示方法などを助言している。「かつては日本人だけに来てほしいという声も多かったのですが、飲食店主らの意識改革が急速に進んでいます」

「全体ではどれくらい増えているのかしら」。日本政府観光局のデータを調べると、今年7月の訪日外客数は前年同月比26.6%増の127万人で月間ベースの過去最高を記録した。昨年初めて年間1千万人を突破し、今年はさらに増えそうな勢いだ。同観光局マネージャーの熊野伸彦さん(44)に今後の見通しを尋ねると、「政府は東京五輪を開く2020年に年間2千万人、将来は年間3千万人の目標を掲げています。2千万人は専門家の分析などを参考にした数字で、達成できるでしょう」ときっぱり。

「どんな効果を期待できますか」。次に、観光庁の門をたたいた。「宿泊費、食費や交通費、お土産の購入代などの出費が日本の消費を押し上げます」。観光戦略課の田嶋ひとみさん(26)が説明した。同庁によると、今年4~6月の訪日外国人による旅行消費額は前年同期に比べ32.6%増の4874億円と過去最高となった。

「人口が減る日本では、消費が伸びにくいとよく聞くが、外国人旅行者の消費はそれを補うほどの規模なのかな」。所長に質問され、首をかしげながら道を歩く明日香に、「外から訪れる『交流人口』が増えると定住人口の減少を補えます」と立教大学観光学部兼任講師の清水慎一さん(65)が声をかけてきた。「人口減に悩む地方経済を活性化する切り札が国内外からの観光客。特に外国人への期待は大きいのです」

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