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島原の「イギリス」、英国とは無縁 海の産物に今治を懐古

2014/10/1 日本経済新聞 夕刊

長崎県の東南部に延びる島原半島に「イギリス」という一風変わった名称の郷土料理がある。寒天の原料であるテングサに似た海藻を使って作るかまぼこ状の食べ物だ。この素朴な庶民料理、江戸時代の島原の乱にさかのぼる歴史が関係しているという。長崎市から電車を乗り継いで1時間半程度の島原の地を訪ねて歩いてみた。

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島原の「中屋商店」のイギリス

異国情緒豊かな長崎の食べ物だし、ハイカラな名前だから英国と関係があると思いきや全く違っていた。長崎市在住の郷土料理研究家、脇山順子さん(77)が説明してくれた。「名前の由来は有明海で採れる『イギス藻』という海藻。干したイギス藻を水でさらして具材を混ぜて作るのがイギリスです」

島原市内で唯一提供している郷土料理店「中屋商店」を訪ねた。小皿で出てきたイギリスは、ベージュ色で表面がつるつるしている。四角い練り物のようだ。

きんぴら風に仕上げた白身魚とニンジンが入っていた。しょうゆに付けて食べると、自然の淡い味覚とともに、磯の香りがほんのり鼻孔に広がった。最初は「インパクトがどうも薄い」と感じたが、食べ進めるにつれ、塩加減がほどよく効き、飽きがこない味覚だ。

海藻が溶けスープ状になったら、具材を入れて再び煮込む

女将の中島ふみえさん(87)は「昔の島原の日常食。最近では自宅で作る家庭が少なくなり冠婚葬祭などの席で食べることが多いですね」と説明してくれた。「懐かしい」と土産用に買って帰る人も多いという。

島原半島の先端にある南島原市で民宿を営む鬼塚美佐子さん(64)に実際に作ってもらった。まず、うるち米のぬかのとぎ汁で乾燥させたイギス藻を洗い、えぐみや不純物を除く。水洗いしながら汁を捨て、再びぬかをもみ出した2番汁にイギス藻を鍋いっぱい入れて弱火で煮溶かしていく。

20分ほどで海藻は形を残さないほど溶け、スープ状になった。鬼塚さんは用意した具材(キクラゲ、シイタケ、ニンジン、厚揚げ、アジの魚)をフライパンで手際よくいため、しょうゆとミリンで味を調えた。これを鍋に入れて煮込むこと10分。熱々の煮汁を金属製の流し箱に移し、冷やして固めれば出来上がりだ。

鬼塚家のイギリスは、しょうゆ味でキクラゲの効果でしっかりした歯応え。イギス藻は毎年5、6月に浜辺に打ち上げられる。「はまのもの(浜で採れる)で食べられないものはないと祖父母から子供時代に教えられました」(鬼塚さん)

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