東京都に住む会社員の沼田秀一さん(40、仮名)には葬儀で苦い思い出がある。数年前、仕事途中に取引先の幹部の告別式に向かったところ、周りは皆、礼服で自分だけが紺のスーツ。「落ち着かず、出棺までが長かった」。それ以来、取引先などの葬儀は通夜に出席するようにしている。
本来出席すべきなのは通夜か告別式か、それとも両方か。一見簡単そうな選択に悩みがちなのが葬儀。実際のところはどうなのか。メモリアルアートの大野屋(東京・新宿)で葬儀や法要の電話相談に応じる川瀬由紀氏の答えは「どちらに出席しても構わない」だ。
本来、通夜は家族など近しい人が亡くなった人と夜通し一緒に過ごすもの。一般の人は告別式で故人に別れを告げる。近年はその線引きが明確ではなくなっており、どちらに出席しても良いとの考え方が一般的という。故人と近しい関係なら両方に出席すればよい。
■上司に対応相談
最近は通夜に人が集まるケースが増えているという。夜に始まるため、日中に仕事をしている人が参加しやすい。また、開始時刻を過ぎて到着しても不自然でないことが多く、焼香などが終われば、自分の都合で帰りやすい。
一方、告別式は参加者が式の初めから終わり(出棺)まで参列する前提で運営されることが多い。遅刻や途中退席は目立つので仕事の調整が必要になりがちだ。
訃報を受けた時点で、これらの条件を考慮し、どちらに参列するかを判断すればよいだろう。
もっとも、遺族の意向があれば別だ。家族や親族のみを集めた「家族葬」は「故人や遺族が多くの人の参列を望んでいないという意味」(川瀬氏)ととれるので、訪問は控えた方がよい。香典や供物を辞退している場合も、それに従う。
取引先など仕事上の付き合いがある人が亡くなったときは、まず同僚や上司に対応を相談することも大事な原則だ。会社や部署単位で参列したり、香典をまとめたりすることがある。個人的に親しい場合は、職場の対応も踏まえて、参列や香典の額を判断しよう。
通夜や告別式に出席する際は、服装に十分気をつけたい。告別式では男女とも礼服が一般的。仕事途中の参列であっても「黒のスーツが基本」(川瀬氏)に変わりない。