メジカの新子、高知の人気者強い弾力、旬は9月まで

高知県を代表する「食」といえば、誰もが思い浮かべるのがカツオだ。ただ、夏から秋にかけての一時期だけは地元民の舌を独占する食材がある。漁業の町として有名な中土佐町と須崎市だけで食べられていたソウダガツオの稚魚「メジカの新子」だ。赤身の魚にもかかわらず、モチモチ、グリグリと表現される独特の食感で人気を集めている。

◇            ◇

メジカの新子はソウダガツオの全長30センチメートルまでの稚魚のこと

「メジカの新子が入荷した。早く来ないと売りきれる」。8月下旬に電話が入った。青柳裕介の漫画「土佐の一本釣り」の舞台として知られる中土佐町にある田中鮮魚店の社長、田中隆博さん(53)からだ。高知市中心街から車で1時間ほどかかる久礼大正町市場に向かった。

メジカの新子は全長30センチ程度までで、ふ化して1年以内の稚魚のこと。例年なら須崎の魚市場には1日当たり1000~3000匹以上水揚げされるが、今年は30~50匹程度でゼロの日も珍しくなかった。8月に相次いだ台風と雨の影響で川から流れてくる土砂によって水が濁り、水温も低く抑えられた。このため、須崎や中土佐の沖まで寄ってこなかったと考えられる。

中土佐町ではメジカの新子は皮も血合いも取って提供する

この日は市場に出店している漁師のおかみさんから買うことになった。既に、メジカの新子を求める先客が10人ほど行列を作っていた。目の前で2人の女性が次々と魚をさばき、刺し身にして手渡していく。

内臓や骨をとってしまうと食べられる量はわずか。皮や血合いを取ってしまうのが中土佐流だ。高知県の酢みかん、ブシュカンの皮をすり下ろした後、果汁としょうゆをかけて食べる。

口にすると弾力で歯がはね返される。魚とは思えない食感だ。その後、赤身魚の味わいが広がる。食べ終わると、器には果汁としょうゆが残る。「メジカのダシも出ている。ごはんにかけるとおいしい」と田中さんに勧められた。

メジカの新子のシーズンは8月中旬から9月の終わりまで。中土佐で漁師を経験し、今は中土佐町商工会会長の川島昭代司さん(67)は「この時期はカツオは脇に追いやられる。多くの人がメジカの新子を求めて大正町市場にやってくる」と明かす。