いずれのタイプでも、目の異変を感じたら早めに眼科を受診することが重要だ。医師は患者の状態を尋ねるとともに、視力やゆがみなどの測定、眼底の検査などを通じて、どんな病気を発症しているか判断する。網膜静脈閉塞症でなくても、高齢者に多い加齢黄斑変性や糖尿病の合併症である網膜症などの可能性もある。

■むくみを改善

網膜静脈分枝閉塞症にかかった60代女性の目。右下が出血し、中心部が腫れているのがわかる

網膜静脈閉塞症の治療では、閉塞そのものを取り除くのは難しいため、黄斑部の浮腫などの改善を目指す。治療法はいくつかあり、症状に応じて医師が選択する。薬物治療では、血液の流れをよくする薬を飲んだり、静脈からの血液や水分の漏れを抑える薬を目の中や周囲に注射したりする。レーザーで網膜を焼き固めて水分をためないようにして進行を抑える方法もある。

こうした治療で改善しない場合は、ゼリー状の球である硝子体の一部を手術で切除し、浮腫の軽減などを目指す。ただ、若松河田眼科クリニック(東京・新宿)の小暮俊介院長は「どの治療法を選んでも、効果には個人差がある」と解説する。

昨年、「抗VEGF(血管内皮増殖因子)治療薬」が国の保険適用となり、治療の選択の幅が広がった。目に麻酔薬を差した後、抗VEGF薬を硝子体に注射する。小暮院長は「眼球内のVEGFは黄斑浮腫を悪化させるので、その働きを妨げて浮腫を軽減して症状の改善を目指す」と解説する。視力が大きく低下する前に治療を始めると効果が出やすいという。投薬後、1カ月以上たって再発したら、再度注射する。

網膜静脈閉塞症の発症リスクを高める高血圧や糖尿病にならないよう、日ごろから注意することも大切だ。血圧をコントロールするには、塩分を控えるとともに、適量でバランスのよい食事、適度な運動などを実践するのが望ましい。酒を飲みすぎないようにし、たばこもやめる。こうした心がけは他の生活習慣病対策にもなる。

中高年になると、老化現象の一種で近いところが見えにくくなる「老眼」も現れてくる。40歳を過ぎたら、目のトラブルや病気が出てくる可能性が高まると頭に入れ、定期的にチェックするとよいだろう。

(川口健史)

[日本経済新聞夕刊2014年9月12日付]

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