「水の音」展涼感誘う個性の競演

2014/9/5

暑い時には水がほしいと思うのが、人間の自然な欲求だろう。東京・広尾の山種美術館で9月15日まで開催中の「水の音」展は、水を描いた同館所蔵の近代の日本画と江戸期の浮世絵を並べ、涼感を演出した。

導入部は、海と川の波のイメージを伝える作品の数々。横山大観や川合玉堂のおなじみの名作に加え、海を描いた大作を対峙するように並べている。橋本関雪「生々流転」は横15メートルを超える画面に、荒波が連綿と逆巻く海景を描いた六曲二双の屏風である。どんよりとした空の色を映すこの屏風に対し、川端龍子「鳴門」は、渦潮の海峡を群青の大画面に描く代表作だ。奥村土牛の「鳴門」も併せて展示され、剛と柔と、画家の個性も浮き彫りになった。

展示のハイライトは、第2章「滝のダイナミズム」だろう。土牛から千住博まで滝を描いた大作をずらり並べたコーナーは壮観で、滝つぼに流れ落ちる轟音(ごうおん)が聞こえてきそうな趣だ。剛毅(ごうき)な垂直線がとりわけ印象的な横山操の雄渾(ゆうこん)な「滝」に対して、岩橋英遠「懸泉(けんせん)」は、細かく分かれて落下する水流の変化を丁寧に描いて、見る者を飽きさせない。奥村土牛「那智」は、熊野の名瀑(めいばく)と周囲の緑を柔らかなタッチで描き分けている。

最後の「雨の情景」のコーナーでは、歌川広重の粒よりの名作が会場を引き締める。「東海道五拾三次之内 庄野・白雨」といった周知の錦絵も、同時に並ぶ大観や玉堂、竹内栖鳳の雨の描写と見比べると、その叙景の細やかな構成美が、改めて感得されるのである。

むろん水の姿は、はるかに多様。池もあれば霧もある。露もあれば涙もある。今展は、それを音と涼感に結びつくシンプルなテーマに絞ることで個性の競演を果たした。水の多様性とその本質へのアプローチは、今後の企画に期待をしよう。

(編集委員 宮川匡司)

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