空の上でもスマホ活用 機内ネットサービス広がる
規制緩和が追い風に
「この便ではインターネット接続サービスを提供しております」。出張客などで混み合う朝7時台の羽田―福岡線。JAL303便に搭乗するとこんなアナウンスが流れる。同便では日航が7月に国内線で始めたネット接続サービス「JAL SKY Wi-Fi」が利用できる。
各社、提供機拡充へ
飛行機が水平飛行になったところでスマホの電源を入れ、機内にある無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントに接続する。ウェブブラウザーで氏名やメールアドレスなどの情報を登録し、クレジットカードで利用料金を支払うと準備完了だ。
あとは地上にいるときと同様にインターネットを自在に使える。ウェブサイトの閲覧やメールの読み書き、経路検索アプリや地図アプリを使った着陸後の交通機関の検索などができる。「ツイッター」や「フェイスブック」、「LINE」などといった交流サイト(SNS)アプリを使って「今、富士山上空を飛んでいます」といった書き込みをすることも可能だ。
料金体系は2種類。大事なメールを至急送信したいなど、短時間使えれば十分の場合は30分あたり400円の時間制がお薦めだ。時間を気にせず使いたい人向けに、着陸まで有効の1フライト制もある。飛行距離に応じ、スマホは500~700円、タブレット(多機能携帯端末)やノートパソコンは500~1200円。
無料サービスもある。機内に設置したサーバーが配信しているテレビ番組などの動画や全国各地の観光地情報などを、乗客はスマホで視聴・閲覧できる。
日航が2年前に始めた国際線のネット接続サービスは、1フライトあたり18.8ドルと高めだが、それでも1便あたり20人ほどが利用しているという。商品サービス開発部企画グループの末崎裕介マネジャーは「機内ネットを使わなくても、急を要する場合にいつでも連絡がつくという安心感が評価されているようだ」と説明する。
同社は機内ネット提供機を順次追加し、現在5機の国内線は2年後に77機まで増やす計画だ。国際線は欧米線中心に13機で提供しており、2015年春以降は東南アジア線でも展開する。
他社も同様の機内ネットサービスを相次いで展開している。全日空は「ANA Wi-Fi Service」を3月に始めた。現在は国際線の8機でサービスを提供しており、15年春までに28機に増やす。スカイマークも今月「SKYMARK FREE Wi-Fi」を始めた。同社は利用料を無料にしたのが特徴で、12月までにエアバス330型機の全機に拡充する。海外勢でも独ルフトハンザ航空などが機内ネットサービスを提供している。
音声通話は難しい
こうした機内ネットの追い風となるのが、国土交通省による規制緩和だ。機内での電子機器の使用制限を9月から緩和し、電波への耐性を確認できた飛行機を対象に常時電子機器を使用可能とする。スマホのように電波を出す機器も、無線LANやブルートゥースなどは使用が認められる。
機内ネットを使って上空でもスマホをフル活用したいところだが、注意点もある。まず回線容量に限りがあること。日航の国内線では、最大毎秒30メガビットの回線を乗客全員で分け合う。そのため「ユーチューブ」などの動画サービスや「スカイプ」「LINE電話」などネット回線を使う音声通話アプリの利用は難しい。
もう1つが、高速通信サービスのLTEや3Gなど携帯電話サービスの電波は現在も9月以降も使用禁止という点だ。搭乗前にスマホを「機内モード」に切り替えて電源を切り、上空で無線LANの電波だけをオンにしよう。
(電子報道部 金子寛人)
[日本経済新聞夕刊2014年8月21日付]
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