山形で「だし」と言えば…夏バテ防ぐ刻み野菜

「だし」と言えば、一般的に昆布やカツオ節などから出るうまみ成分の「出汁」のことを指すが、山形県内陸部の村山地方では夏に食べる郷土食をこう呼ぶ。キュウリやナス、ミョウガなどの夏野菜をみじん切りにして混ぜ、しょうゆをかけて食べる超シンプルな料理。この素朴な味が生まれた背景には、山形特有の気候が大いに関係している。

ごはんに載せたり、そばや冷ややっこにかけたりして食べる

山形の夏はとにかく暑い。特に山形市周辺の村山地方は山々に囲まれた典型的な盆地気候で、熱気や湿気がこもりやすい。何しろ1933年に山形市で記録したセ氏40.8度の気温は、2007年に埼玉県熊谷市、岐阜県多治見市に抜かれるまで74年間、日本記録を保持してきた。暑い日が続くと食欲が進まないのも当然。そんな時こそ「山形のだし」の出番だ。

野菜を刻んだだけなので非常にさっぱりしている。脂っこい肉料理や揚げ物などよりも、こうした淡泊な味わいこそがまさに夏バテの胃にうってつけ。ご飯に載せてかき込むとするすると胃の中に入り、何杯でも食べられるから不思議だ。

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作り方はいたって簡単。だが、バリエーションは非常に豊富で奥が深い。100軒の家があれば100通りのだしがあるように、家庭や地域によって使う材料や調味料も微妙に違う。

キュウリ、ナス、ミョウガは基本だが、これに大葉(青ジソ)やネギを入れることもあれば、タマネギを加える家庭もある。刻み昆布やオクラ、山芋を混ぜてネバネバ感を出すことも多い。辛いのが好きな家ではシシトウや青トウガラシを隠し味に使うことも。

調味料もしょうゆがベースだが、めんつゆやダシ入りしょうゆをかける家もある。食べ方もご飯のお供だけでなく、冷ややっこ、そば、そうめんに載せるなど実に多彩だ。いわば薬味のような存在なのだろう。

「昔、農家の嫁は午前の農作業が終わると急いで家に帰り、畑から取ってきた野菜を手早く刻んでだしを作り、昼の食卓に並べたそうです」。山形市在住の郷土料理研究家、新関さとみさん(50)は義母から聞いた話を教えてくれた。究極のまかない食とでも言えようか。昔は急な来客があっても、あり合わせの材料でもてなすことができた。

栄養学的にも理にかなっている。キュウリはカリウムが豊富で身体を冷やす効果があるともいわれる。ナスは動脈硬化を防ぐとされるアントシアニンやポリフェノールが多く含まれる。ミョウガや大葉は香りが強く食欲増進にもってこい。防腐作用もあり腐りやすい夏の料理には最適だ。

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