肩の上下・腹式呼吸… 100人を前にあがらず話すコツ

一般社団法人あがり症克服協会の理事長で、「あがり症・話しベタさんのためのスピーチ塾」を主宰する鳥谷朝代さんによると、受講生の大半が、あがった時の声の震えを直したいと望むという。その対処法が腹式呼吸。「身につけば、横隔膜と周辺の筋肉が鍛えられ、強く深い呼吸ができるようになる。声も震えなくなる」(鳥谷さん)

練習法は簡単。まずへその下に手を当て、腹を引っ込めながら、口から息を吐き切る。次に鼻から深く息を吸い。腹を膨らませていく。この繰り返しだ。同時に発声トレーニングも行えば効果的。腹式呼吸で息を吐く時に「あー」とできるだけ長く声を出し続ければよい。トレーニングを続ければ、声は震えなくなる。

無論、これらの対策をとっても、やはりあがるという人も少なくない。頭の中であがることを心配しすぎて、かえってあがってしまうようだ。その場合は五感を刺激するのも手だ。

例えばあめ玉をなめる、手のツボを押す、夏なら直前に冷却シートを体に貼るのもよい。温泉につかって心地よさを感じている自分を想像してほしい。たいていの人は身の回りの難しい問題のことなど考えないだろう。それと同じで、本番前に五感によい刺激を与えると、失敗する不安を自然と感じなくなるだろう。

松本さんが講演の際に使うのは香水。本番直前に手につけると「香りに意識が向いてリラックスできるし、マイクを持って話している最中にも香るので、あがることがない」という。

■自分が「見る側」に

大勢の前に立つ際の心構えも、あがりを左右する。「一対一でも、大勢でも人前であがらずに話す技法」(大和書房)の著者で接客・営業コンサルタントの森下裕道さんは「あがるのは人から見られることばかり意識するから。自分が見る側と考えれば、あまり緊張しない」と助言する。

企業の採用試験では面接官より面接者が緊張しやすい。しかし、面接官も隣で上司が見ていたら緊張するだろう。

では、どうすれば「見る側」になれるか。スピーチをする場に早く行って、聴衆を待つのが一つの方法。本番でも壇上に移動しつつ参加者を一人ひとり見回してみる。そして、話し始める前に自分に言い聞かせる。「スピーチをするのは皆に喜んでもらい、役に立つためだ」。心からそう思えたら緊張は解け、あがることもないだろう。

自分にとらわれず、聞く人を思いながら、心のこもったスピーチをしよう。

(ライター 上田 真緒)

[日本経済新聞夕刊2014年8月11日付]