日下紗矢子リサイタル草創期のドイツ音楽を選曲

日下紗矢子の「ヴァイオリンの地平」と題されたシリーズ。第1回であるこの日は「バロック」がテーマ。

ベルリンを拠点に活動している日下=写真 堀田 力丸

普通なら、コレッリやヴィヴァルディなどイタリアの巨匠の曲も入りそうだ。ところが日下はひとひねりした、興味深い選曲をしてきた。

J・S・バッハの祖父の世代から同年配まで、17世紀生(うま)れのドイツ語圏の作曲家4人の作品を、バッハの前にとりあげる。つまり、イタリア音楽の魅力を消化し、個性を確立しながら、18世紀以後の隆盛につながる、ドイツ音楽の草創期を紹介するプログラムなのだ。フライブルクで学び、ベルリンを拠点とする日下ならではの構成だろう。

聖母マリアの生涯を物語化したビーバーの「ロザリオのソナタ」第14番で始めたのは、教会から世俗へ拡大していく、芸術音楽の流れを示す意味が込められているのか。

続いてバッハの無伴奏ヴァイオリン曲に影響を与えたヴェストホフの組曲とピゼンデルのソナタの間に、通奏低音を伴うシュメルツァーのソナタ第4番とビーバーの「描写的なソナタ」が演奏される。日下の流麗な技巧と、純度が高くブレのない硬質の美音が鮮やか。ラファエル(チェンバロ)とアレケ(チェロ)のアルパーマン父娘の伴奏も、しっかりと日下を支えた。

ラストのバッハのソナタ第2番では、伴奏がチェンバロだけになる。即興性に代って確固とした骨格と構成をバッハの登場がもたらしたことが、ここでよくわかった。

現代のヴァイオリンと弓を用いることで、バロックから現代への一貫性を強調した日下。作品がより情感をます次回の古典派以降でどんな響きを聴かせてくれるか、楽しみだ。13日、トッパンホール。

(音楽評論家 山崎 浩太郎)

注目記事