旅行・レジャー

耳寄りな話題

カープ大エース、北別府学さん支えた夫人特製スープ 大量のニンニクが全身にしみた

2014/7/30 日本経済新聞 プラスワン

登板日の朝、北別府家の空気はぴりぴりと張り詰めていた。11時ごろに朝昼兼用でとる食事は味噌汁と麺類中心。和食派だが、緊張のあまりご飯がのどを通らない。食べるのはもっぱらそばやそうめんだった。

(きたべっぷ・まなぶ)1957年鹿児島県生まれ。75年、宮崎県都城農高から広島東洋カープに入団。3年目から11年連続2桁勝利を挙げる。82年と86年に最多勝、沢村賞を獲得。通算成績は213勝141敗5セーブ。2012年に野球殿堂入り。野球解説者。 【最後の晩餐】トマトでしょうか。味が濃くて、夏のにおいがぷんぷんするトマトが好きです。粗塩片手にかぶりつくのはたまらないですね。今は庭で手に入るのでありがたみが薄れていますが、なくなるとほしくなります。冬は困りますね。あっさりしてにおいも少ないトマトが多いので。でも妻がおいしいトマトを探してきてくれます。

「精密機械」と呼ばれ、寸分の狂いもない絶妙のコントロールを誇った。長いプロ野球の歴史の中で24人しかいない200勝を達成した大投手は、試合のたびに重圧と戦っていた。

勝つことは義務だった。登板の2日前から口数が減り、緊張感が高まる。「しゃべったり笑ったりすると、ためてきたエネルギーが抜けてしまう」。食欲もない。「腹は減っているのだろうけど、胸に何かが詰まっている感じ」。登板に備えてしっかり食べるなんてことはできなかった。

マウンドに上がれば最後まで投げ抜いた。試合終盤に脱水症状を起こすこともしばしば。それでも力を振り絞った。下手にベンチを見ると当時の古葉竹識監督に怒られる。「スタミナが足らんのならもっと練習しろ、と言われるのがオチ」。求められているのは完投勝利。試合が終わると体重が4キロも減っていた。

しんどい試合の後、疲れきったエースを夫人特製のテールスープが癒やした。牛のテール(尾)にたっぷりのニンニク、ニンジン、セロリ、タマネギを加え、形がなくなるまでじっくり煮込む。ニンニクの多さは半端でなく、「当時のカープの若い選手、例えば津田(恒実投手)なんかが飲んで鼻血を出した」ほど。滋養たっぷりの温かいスープを飲むと、失われた体力が戻ってきた。

実はこのスープ、体力回復のほかに、もう一つの役割があった。「胃を温めてからビールを飲むため」。無類の酒好きだが、登板が近づくと飲むことはできない。登板後、いきなり冷たいものを飲むと胃がびっくりして激しいけいれんを起こしてしまう。準備のためのスープでもあった。

旅行・レジャー 新着記事

ALL CHANNEL