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企業、なぜ多様な人材確保?

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 「夏休みは企業のインターンシップに参加します」と知人の留学生が、探偵の松田章司に話しかけてきた。「最近、企業は女性や外国人を採用し、人材の多様性を大事にしています」との言葉に、章司は「どんな利点があるのかな」と調査に出た。

互いに刺激、成果向上期待

章司は、昨年「ダイバーシティ(多様性)宣言」を出したLIXILグループを訪れた。同宣言でダイバーシティとは性別、年齢、国籍、価値観などの異なる社員に、属性にかかわらず活躍の機会・場を公平に提供すること。新卒で女性や外国人を3割採用するなどの目標を掲げる。

「どうして多様性が重要なのですか」。章司がダイバーシティ推進室長の成田雅与さんに尋ねると「多様なモノの見方ができなければ、グローバル競争に勝てないというトップの強い信念があります」。同社は2011年にトステムやINAXなど住設大手5社が統合し発足。米ゼネラル・エレクトリック出身の藤森義明社長が経営戦略として取り組み、人材育成や多様性の確保は管理職の評価基準の一つになっているという。

「銀行は働く人の約半数が女性なので活躍してもらって企業としての強さの源泉にしていきたいです」。章司に話しかけてきたのは、三井住友銀行のダイバーシティ推進室長、渋谷珠紀さん。今年度、同行では国部毅頭取が「ダイバーシティ推進委員会」を立ち上げ、各部門で女性に力を発揮してもらう施策を検討。外部委員から助言も受ける。

少数派の孤立防止 課題に

「企業のトップが動きだしているんだな」。章司が事務所に戻ると、同僚の深津明日香が資料を差し出した。「多様な人材がいる企業は利益を上げているのよ」。米金融大手ゴールドマン・サックスによると女性管理職比率が高い日本企業は利益率が高い。経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「なでしこ銘柄」の株価も市場平均を上回る。

「でも、好調な企業が女性を多く採用しているだけじゃないのかな」。納得できない章司が早稲田大学准教授で経営学が専門の入山章栄さん(41)に尋ねると、「確かに因果関係は逆の可能性も高いです」。多様性と企業利益の関係は、プラスという説とマイナスという説の両方で様々な論文がでているという。

「過去に発表されてきた多くの研究結果を再集計するメタ・アナリシスという分析によると、能力や経験の多様性は生産性を上げる一方、性別や人種などの属性の多様性は必ずしも利益につながらず、場合によっては悪影響を及ぼします」と入山さん。たとえば、同質な男性だけの組織に少数の女性を入れると「あうんの呼吸」が通じなくなったり一体感が減ったりして、生産性は落ちることがある。

少数派が孤立する問題もある。入山さんは「経営学では組織内の断層をフォルトラインと呼びます。これを防ぐには新卒女性だけではなく外国人や中途採用の男女を増やすなど、見た目で二分化しないよう複数の次元の多様性を進めることが有効です」。

「でも、女性顧客が多い領域では女性の視点が企業に利益をもたらしそうですね」。章司が人事や組織に詳しい東京大学教授の大湾秀雄さん(50)に尋ねると「実は同じ属性の人がニーズを引き出せるという説は証明されていません」。米国で小売チェーンの店舗ごとに従業員の構成を地域の構成に合わせることが売り上げに貢献するかを調べた研究では、言語の多様性は重要なものの性別などの属性の効果は出なかったという。

「一方、能力や経験の多様性が重要なのは、得意な業務がそれぞれ違ったり、お互いに学び合う効果が出るためです」と大湾さん。問題解決を図るときや業務を分担する上では、様々な能力の人がチームにいた方が成果が上がりやすいとの結果が出ている。この観点から女性を専門職や女性だけのチームにとどめておいても、孤立する悪影響がないかわりに、多様性による好影響も期待できないという。

「単に女性や外国人を増やせばいいというわけではないんだな」。章司がつぶやくと、「実は現状の日本の労働市場では女性を増やすだけでも利益が上がる面もあります」と声がした。振り向くと、労働経済学が専門の慶応義塾大学教授・山本勲さん(44)。「これまでの雇用慣行により日本では女性は中途採用市場などで賃金水準が抑えられています。企業にとってはコストを抑えて優秀な人を雇えて、能力を発揮してもらえれば利益があがります」

山本さんは「能力を発揮して働き続けてもらうには、柔軟な働き方を認める施策を打つとより効果的です」。大企業、製造業など人材育成に費用をかけている企業では、長時間労働の是正などが生産性を高めるという。「離職率が下がり、教育投資を回収しやすくなるためでしょう」と山本さん。短時間勤務制度などを導入し、効率的に成果を出せる働き方が定着している企業では、女性を増やすほど利益が上がるとの研究もある。

「様々な能力や経験を持つ人を採用して、働き続けやすい職場をつくることが必要なんだな」。章司が事務所で報告をすると「うちの事務所は老若男女に猫までいるから多様性はばっちりだぞ」と所長。章司は「その多様な人材をうまく活用できるかはトップ次第みたいですよ」とニヤリ。

経験発揮できる環境 大切

安倍晋三政権が女性活用を掲げ、女性管理職目標などを設定する企業も増えてきた。東京大学の大湾教授は「少数派には情報が入りにくく、『やっぱり使えない』と思われたり昇進が遅れたりするので、まず数を増やすことも重要」と話す。

政府は労働力人口が減る中で女性活用を推進したい考え。ただ、みずほ情報総研の山岡由加子・上席課長は「出産などで働けない時期もあり、上回る利点を感じない企業は女性を増やしづらい」と指摘する。政府は公共調達で女性活用企業を優遇するなど策を打つが、効果を実感する企業はまだ少数。首相の掛け声とは温度差がある。

女性だけに焦点を当てていては抜け落ちる視点もある。海外では「幅広い人種、LGBT(性的少数者)、障害者などがそれぞれスキルや背景を認められて活用されるべきとの考え方があり、経営戦略に組み込まれている」(米JPモルガン)。国の後押しでダイバーシティ推進室を作る日本企業は増えても、人事や組織を動かす権限がないことが多い。「トップが必要性を感じ、経営企画の下などで異動や配置も含め本気で取り組む必要がある」(山岡氏)

日本は転職が少なく、多様な経験や背景が評価されにくい面もある。少数派への配慮や労働市場の流動化など、女性活用とともに政府が取り組むべき課題は多そうだ。

(経済解説部 井上円佳)

[日本経済新聞朝刊2014年7月22日付]

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