乳がん・子宮頸がん… 検診、早期治療の勇気を働く女性の病気(下)

「乳がんと診断されても仕事を辞めようと考えないで」。がん患者からの相談に、自身も乳がんを患った経験を持つ溝口綾子さんはこう助言する。乳がん体験者でつくる患者会KSHSの代表だ。

溝口さんは歯科衛生士で、2007年に乳がんが判明。手術で入院した以外は通院治療を受け、仕事と治療を両立してきた。「治療費のことも含めて仕事が治療の支えになる部分もある」と話す。

■12人に1人が発症

乳がんは女性に最も多いがんで、日本では年間約6万8000人が発症している。患者は増加傾向にあり、生涯のうちで乳がんになる女性は半世紀前は50人に1人だったが、現在は12人に1人といわれている。30代後半から急激に発症数が増え、40代後半~50代前半にピークとなる。女性が職場や家庭で最も活躍する年代に多いがんだ。

ただ、乳がんは発症しても早期に見つけて適切な治療を受ければ命に直接の影響が出にくい。日本人女性で死亡数が最も多いのは大腸がんで、発症数が最多の乳がんは5位だ。「定期的な検診で乳がんはかなり見つかる」と三菱UFJニコスの中野里美統括産業医は指摘する。

同社は全従業員の過半数が女性で、35歳以上に年1回の婦人科系のがんの検診を義務付けている。だが、陽性となっても精密検査を受けない人が多いのが課題という。「がんが怖くて正面から向き合いたくないという気持ちと、職を失うかもしれないなどの就労面の不安がある」と中野統括産業医はみている。

治療は2つに大別できる。乳房にできたがんを取り除く局所治療と、転移を予防する全身治療だ。局所治療は手術と放射線照射で、全身治療は抗がん剤などを投与する。手術には乳房をすべて切除する方法と部分的に温存する方法があり、がんの広がりなどを見極めて決める。全切除の場合は、乳房を再建する手術を受ける患者も増えている。

薬を選ぶ際に重要なのが、乳がんのタイプ。組織を調べる検査で判定できる。がんを増殖させるホルモン受容体やがん細胞表面にあるHER2(ハーツー)たんぱく質の有無、がん細胞の形や増殖能力の組み合わせによって、効果が期待できる薬が決まる。

薬物療法は通院でできる場合も多い。聖路加国際病院(東京・中央)の山内英子ブレストセンター長は「がんの状態を知り、それぞれの治療の利点と課題を納得できるまで医師に聞き、理解して選ぶことが大事だ」と訴える。

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