伊豆の鰹節 火と煙操る独自製法守り抜くうまみ凝縮、深みある味わい

1958年が初版の本山荻舟著「飲食事典」によれば、鰹節(かつおぶし)は「日本の特産で」「製法には薩摩式・土佐式・伊豆式などがあり、大同小異の中に各々特徴を存した」。

荒節を削ってタール分などを除く

農林水産統計だと2010年の鰹節生産量は鹿児島県が全国の70%を占め、静岡県の26%と合わせると100%近くになる。残りが高知県、千葉県、三重県などだ。では静岡県の産地は伊豆かというとそうではない。焼津が一大産地で「焼津鰹節」は地域団体商標になっている。

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かつて伊豆に鰹節の産地があり、鹿児島、高知と並ぶ独自の製法を誇った。それはどんなものだったのか。西伊豆町のカネサ鰹節商店を訪ねた。5代目の芹沢安久さん(45)は「ここ田子(たご)の集落に伝わる手火山式焙乾(ばいかん)製法のことです」と言う。

冷蔵技術がなかった時代の食品保存法は主に干す、煮る、塩蔵、その組み合わせだった。鰹もそうした保存が試みられた。それでも中に水分や脂肪が残るから、それほど持たない。

室町時代になって、煮た鰹をかまどなどの上につるして熱と煙で乾燥させる方法が生まれた。鰹節の原形だ。江戸時代に下からまきを燃やして焙乾する手法ができあがる。文字通り焙(あぶ)って乾かすことによって鰹内部の水分を抜き、保存性を高める工夫だ。

この段階でできるものを「荒節」といい、薄く削ったものが削り節で、吸い物などの出しに使われ、昆布とともに日本料理の味を形作った。現在、市販されている削り節の80%が荒節の削りだ。その後、荒節にカビを付着させて、カビの力で中の水分を抜いた「本枯れ節」が誕生する。

創業1699年の老舗「にんべん」がネット上に公開している「かつお節塾」に大略するとこんな記述がある。

「紀州印南浦の土佐与市という鰹節職人が1801年、伊豆に改良土佐節を伝えた。伊豆では土佐節を見習った上でカビ付けの回数を2、3回多く行い、脂肪や水分を節の中から抜く製法を編み出した。伊豆節が誕生すると土佐節と並んで全国的に高い評価を得た」

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