食費から娯楽まで割引 子育て支援パスポート制度
「普段よく行くお店で割引が受けられるのが嬉しい」と話すのは、京都府で2歳の子どもを育てる専業主婦のAさん(29)。財布の中にいつも「きょうと子育て応援パスポート」を入れて持ち歩き、利用可能なショッピングモールや飲食店などでカードを提示するようにしている。最近ではチャイルドシートを自転車ショップで買うときに5%の割引を受けた。
子育て支援パスポートは全国の多くの自治体が導入している(表)。地域内に住み、18歳など一定年齢までの子どものいる世帯(妊娠中を含む場合も)を対象にカードを配布。子育てを応援したいとして登録した店や施設で提示すると、割引やポイント付与、商品券・景品の贈呈などを受けられる。
東京都の場合は、台東区や足立区、北区など一部の区や市が制度を運営している。カードは発行せずクーポン配布などで支援する自治体もある。「自分の住む自治体に制度があることを知らない人も多い。まずはウェブサイトや広報誌で確認してほしい」と社会保険労務士の井戸美枝さんは話す。
カードの交付方法は様々だ。出生や転入を機に手続きすると郵送されてくることもあれば、子どもが通う小学校や幼稚園で配布されることもある。インターネット上で登録する例もある。スマートフォンに専用画面をダウンロードしてパスポート代わりにできる自治体もある。
優遇を受けられるのは地域の商店・飲食店からスーパー、大型の商業施設まで幅広い。学習塾の入学金割引や金融機関の教育ローン優遇など、子育てと関連の深い分野だけではない。クリーニング店や理容室など家計にうれしい割引も多い。例えば埼玉県の「パパ・ママ応援ショップ優待制度」は協賛店・施設の数が約1万8500。携帯電話ショップでの値引きや金融機関での住宅ローン優遇など対象はバラエティーに富む。
レジャー施設にも活用できる。例えば足立区の場合、東武動物公園で割引を受けられる。ワンデーパスの通常料金は大人4800円、子ども3700円だが、パスポートの提示によってそれぞれ1000円、800円割り引かれる。
子ども連れで買い物するときに役立つサービスもある。授乳やおむつ替えのスペースを提供してくれたり、荷物を一時的に預かってくれたりする。割引や景品贈呈などは子連れでなくとも受けられるケースが多い。
自治体のエリアをまたいで優遇を受けられるケースも増えている。埼玉、群馬、茨城、栃木、福島、新潟の6県は2年ほど前から子育て支援事業で連携。互いに他県のパスポートを配布する仕組みを整えた。
例えば埼玉県に住む人が、福島県の「ファミたんカード」を持ちたいなら、埼玉県の窓口で申請すればいい。条件を満たせば6県すべてのパスポートを使うことも可能だ。
西日本では大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、三重、滋賀、徳島、鳥取が連携しており、相互利用が可能。例えば大阪府が発行する「まいど子でもカード」を持っていれば、京都府や他県の協賛店でサービスを受けられる。
自分の住む自治体でどんな優遇があるかはサイトを参考にしよう。分野・地域別に一覧できたりキーワードで検索できたりするので便利。協賛店にはステッカーやポスターが貼ってあることも多いので目印にしよう。
カードを携帯していさえすれば面倒な手続きもなく優遇を受けられるのが子育てパスポートの良さ。子どもを出産したときや他県から転入したときは早速交付の手続きをして活用したい。もしパスポートを紛失してしまった場合は、必要書類を窓口に提出するなどして再交付してもらおう。
(ライター 福島 由恵)
[日経プラスワン2014年7月12日付]
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