第1に、座って仕事をしている場合でも、少し筋肉を動かすように意識すること。マッサージ治療などを手掛けるオスト(東京都文京区)院長の佐藤泰彦さんは、「足首を動かすだけでも、ふくらはぎの筋肉を使い、リンパの流れを促進できる」と話す。

■腹式呼吸も有効

ふくらはぎは、足のリンパ管の大事なポンプになっているので特に意識して動かしたい。ゆっくり力を入れ、その後、脱力する程度の動きでも刺激になる。トイレに行く時などに少し足を高く上げて歩くのもいい。

次に、ゆっくり腹式の深呼吸を繰り返すのも、おなかのリンパ管を刺激するので試してみたい。いすに深く座り、息を大きく吸い込んでおなかを膨らませる。次に、おなかの筋肉を働かせて息を吐き出す。

第3に、少しでも機会があれば横になる。広田さんは「昼休みなどに10分でも横になると、ずいぶん効果がある」と指摘する。横になって寝るのが難しければ、いすに座った状態で手前に何か台を置き、足を投げ出すという手もある。重力の影響が小さくなりリンパが流れやすくなる。

健康な状態なら、こうした軽い動きを心がけることで流れはずいぶんよくなる。もし深刻なむくみの症状などが残るようなら、心臓や肝臓などに何か病気が隠れている恐れもあるので、医師の診断を受けるようにしたい。むくみ予防であれば、医師から専用のストッキングやハイソックスをはくことを勧められるかもしれない。足の外側から圧力を加え、下半身にたまるのを防ぐ。

リンパの流れを促進する方法として、最近は専門のマッサージ(リンパドレナージ)が話題になり、入門書も増えてきている。乳がんなどの手術で、がんの転移に伴って付近のリンパ節を切除すると、むくみが出るため、そうした場合にマッサージを施す。

だが、一般のマッサージとやり方が違う点も多く、実際、専門家にマッサージしてもらう体験をしないと、自分ではうまくできない場合もある。広田さんは「まずよく歩いて筋肉を動かすなど、健康な生活を維持することを第一に考えてほしい」と強調する。

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マッサージ、力入れないで

筋肉をもみほぐすマッサージは手に力を入れることも多いが、皮膚のすぐ下を通っているリンパ管を刺激するリンパマッサージの場合、力はいらない。手をあてたら、リンパ液が移動するようにゆっくり皮膚の下をずらすイメージで動かす。オイルやクリームは、手が滑るので使わない。

リンパは足などの末端から、足のつけ根にある鼠径部(そけいぶ)、腹、胸などのリンパ節を通り、最後は首の付け根のあたりから静脈に合流する。末端の流れをよくしてもその先が滞っていたら行き詰まるため、マッサージは原則、ゴール手前の首の付け根から始め、最後に末端の流れを促進する。

(編集委員 平田浩司)

[日経プラスワン2014年7月5日付]