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コチシュ指揮ハンガリー国立フィル 大胆なピアノ、管弦も呼応

2014/7/9 日本経済新聞 夕刊

世界的ピアニストでもある指揮者ゾルタン・コチシュが音楽総監督を務めるハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団の来日公演。注目は日本人の父とハンガリー人の母を持つ金子三勇士(みゆじ)(24)のピアノによるリストの「ピアノ協奏曲第1番」だ。

金子三勇士(ピアノ)と指揮のコチシュ=写真 堀田 力丸

「コチシュが弾くバルトークのピアノ曲のCDを聴いて音楽に目覚めた」と話す金子は6歳から10年間、親戚のいるハンガリーで育ち、国立リスト音楽院大学に進学。2008年のバルトーク国際ピアノコンクールで優勝した経歴を持つ。一方のコチシュはシフらと並ぶ同国を代表するピアニスト。特にバルトーク作品で原始的躍動感と洗練を兼ね備えた名演を残してきた。その憧れのコチシュの指揮で金子がリストを弾く。「ハンガリー人になりきる」と言っていた通りの熱演となった。

「第1番はリストの若い頃の曲。青年の感情を思いきり出す」との捉え方で、金子は最初の強い和音をやや性急に打ち込む。随所で大胆な緩急を付けるなど、管弦楽に合わせるよりは対決するピアノだ。管弦楽は初めこそ伴奏的で控えめだったが、トライアングルとの有名な掛け合いが登場する第3楽章から金子の挑発的なピアノに呼応して思い切りの良い響きになった。

金子のピアノは細部に拘泥せず作品全体を大きく捉え、強い打鍵が印象的だった。だが彼の本来の持ち味は弱い音から強い音までムラなく、高い透明度を保つ響きだ。それを証明したのがアンコールのリスト「愛の夢」。優しい繊細な音色に期待を抱かせた。

ハンガリー管はほかにリスト「ゲーテ記念祭の祝祭行進曲」、ブラームス「交響曲第1番」も披露した。6月23日、サントリーホール。

(編集委員 池上輝彦)

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