渇き。少女にささげた犯罪映画

過激な暴力にみちた犯罪ミステリーで人気上昇中の作家、深町秋生のデビュー作「果てしなき渇き」(2005年刊)を、「下妻物語」(04年)、「告白」(10年)等、はでやかな映像技法をこらした作品で知られる中島哲也監督が映画化した。脚本に、小説家/女優/映画監督の唯野未歩子がくわわっている。

しょっぱなから、才気走った、はなやかで目まぐるしい映像展開でとばしていく。女の顔のシルエットが「愛してる」と言う。男(声で主演の役所広司とわかる)が「ふざけんなッ!」と怒気をこめて言う。それからも、関連性はわからないが、本すじ部分から抽出しているかと想像されるシーンが、フラッシュ的に、興味をかきたてるようにつらなり、コミック調のアニメーションとアルファベット表記のクレジット・タイトル(読みきれない)が狂躁的な気分をあおる。

本すじにはいってからも狂躁的な空気は持続する。

役所広司が演じる藤島は野獣のような男で、ある事件をおこして退職させられるまでは刑事だった。いまは警備会社勤務。コンビニでの3人惨殺事件に遭遇する。と同時に、離婚した妻から、高校生のむすめ、加奈子(小松菜奈)が失踪したと連絡がくる。警察ではなく藤島に連絡したのは、加奈子のカバンから覚醒剤が出てきたからだ。

藤島は加奈子の行方を捜索する。そして、まったく知らなかった、深い悪の世界に踏みこんでいたむすめの顔が見えてくる……。

単なる非行少女のはなしではなく、もっと深く大きな闇がひろがる。原因は藤島自身にもあり、彼は自己破壊衝動に駆られる。

ファム・ファタール(男をほろぼす女)ならぬ異能のロリータ・ファタールともいうべき加奈子を、新人の小松菜奈が演じ、かなりの成果。この少女神にささげられたノワールな讃歌だ。1時間58分。

★★★

(映画評論家 宇田川 幸洋)

[日本経済新聞夕刊2014年6月27日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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