明宝VS.明方 岐阜の「ハム戦争」に歴史あり村消えても並び立つ両雄

反骨の村にも、平成の大合併の波が押し寄せる。2004年、明宝村や八幡町など7町村が合併して郡上市が誕生した。その際、旧明宝村の7自治会が金を出し合って一般社団法人「明宝」を設立。旧村から明宝特産物加工の株式を取得して、経営を引き継いだ。

肉塊をサイコロ状に切断しミキサーで撹拌する(郡上市、JAめぐみの郡上加工事業所)

高田さんは「村の名前は消えたが、明宝ハムのおかげでUターン就職が増え、地区の人口は減っていない。過疎脱却の目的は達成できた」と満足そうに語る。

明宝地区から八幡地区に戻り、明方ハムを生産する「JAめぐみの」の郡上加工事業所を訪ねた。手作業で豚肉の脂肪や筋を取り除く工程は同じだ。最新のドイツ社製のカッターで肉と脂肪をサイコロ状に切断し、ミキサーで1度に160キログラムの肉を撹拌する。こちらは2週間塩漬けするため、やや塩辛いのが特徴だ。

和田雅津所長(54)は「国産豚肉100%、水は一切使わないので、おいしくて当たり前」と自慢する。両ハムとも県産肉だけでは需要に追いつかず、現在は九州産が主流。豚肉価格の高騰に悩みながらも、売り上げを伸ばし続けている。

郡上八幡産業振興公社が販売する両ハムの詰め合わせ「郡上のハム競演」

ハム戦争ぼっ発から26年。14年3月期の売上高は明宝ハムが13億9千万円、明方ハムが7億8千万円。明宝ハムの蒲昌範社長(52)は「ハム戦争で話題になり、大きな相乗効果があった」、明方ハムの和田所長も「分かれて競い合ったからこそ、お互いここまで伸びた」と言う。

郡上八幡産業振興公社は06年から、両ハムを詰め合わせた「郡上のハム競演」を販売している。公社の畑中敦さん(41)は「以前は八幡産の明方ハムだけを売っていたが、合併を機に、郡上の2大ハムとして売り込みたい」と話す。ハムの両雄は、地域の誇りを支えるブランドとして並び立ち続ける。

<マメ知識>ともに特級プレスハム
肉をばらして、つなぎと混ぜて固めて作るプレスハムは日本独自の食品だ。1947年、伊藤食品工業(現伊藤ハム)が初めて商品化。安価で、貧しかった戦後の食卓に普及した。豚以外の肉も混ぜていたことから「寄せハム」とも呼ばれていた。
日本農林規格で、プレスハムは肉塊含有率によって(1)豚肉だけの肉塊が90%以上で「特級」(2)肉塊が90%以上、豚肉が50%以上なら「上級」(3)肉塊85%以上が「標準」――に分かれる。国産豚肉だけを使う明宝、明方ハムは堂々の特級だ。

(岐阜支局長 杉野耕一)

[日本経済新聞夕刊2014年6月17日付]

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