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ライフコラム
エコノ探偵団

2014/6/11

エコノ探偵団

「実は日本の再分配政策は非効率で、貧困解消に力不足です」。一橋大学教授の小塩隆士さん(53)も会話に参加した。社会保障の多くが幅広い高齢者向けで、本当に困っている高齢者や若者、子どもに向かっていないという。「再分配による相対的貧困率の改善率は50%で、OECD30カ国中25位という成績の悪さです」と小塩さん。

「子どもに投資する期間は一時的で人数も減っているので大きな費用にはなりません。しかも、就学前の子どもへの投資効果は高いとされています」と再び、阿部さん。13年に産まれた子どもの数は過去最少を更新。政府は出生率の引き上げ目標を立てようとしていたが、「現金給付で家庭を安定させて貧困層の子どもたちを引き上げるほうが、政策として取り組みやすいと思います」と阿部さん。

章司が事務所で報告を終えると、三毛猫のミケが子猫を連れてきた。「将来、探偵猫に役立つかも」と章司。所長は「若手探偵よりこっちに投資するか」とニヤリ。

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家庭養護の役割大きく

「貧困の連鎖」は、保護者と暮らせない事情がある子どもたちの間ではさらに深刻だ。世界の人権問題に取り組むNGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、日本では虐待から保護されたり親と死別したりした子どもの9割近い3万4千人(2013年)が、乳児院や児童養護施設などで暮らす。

HRW日本代表の土井香苗さんは「海外に比べ養子縁組や里親制度で家庭に引き取られる割合が極端に少ない。施設では虐待やいじめの問題も指摘される場合がある」と話す。子どもたちは18歳で自立を目指すが、保証人を得づらく、貧困に陥ったり、その子どもがまた施設に入ったりする事例も多いという。

土井さんは「施設養護には0~18歳の間で1人1億円程度かかるといわれる。国の費用面でも里親の方が少なく、養子ではほとんどかからない。家庭養護は本人にも財政にも好影響をもたらすはず」と指摘する。

養子縁組に詳しい東京大学研究員の野辺陽子さんは「子どもを授からなかった夫婦など里子や養子を受け入れたい家庭があっても、あっせんの条件が厳しく実現しないことも多い」と話す。子どもに障害がある場合など、受け入れる家庭の側の心の準備が整っていないこともあるという。野辺さんは「受け入れ後も家庭を継続的に支援をしていく必要がある」と強調する。

(井上円佳)

[日本経済新聞朝刊2014年6月10日付]

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