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「フランス印象派の陶磁器」展 ジャポニスムの浸透力

2014/6/16 日本経済新聞 朝刊

 ジャポニスムというとモネやゴッホらの浮世絵にモチーフをとった絵画をまず思い出す人が多いだろう。しかし、19世紀後半の西欧美術に与えた日本美術の影響は何も絵だけにとどまらない。

《ルソー》シリーズ 雄鶏に熊蜂図皿(左)と花にはぜ図コンポート(右)(フェリックス・ブラックモン画、1867年、ファイアンス陶器、Y.&L.ダルビス蔵)

 東京・汐留のパナソニック汐留ミュージアムで開催中の「フランス印象派の陶磁器」展は、1866年から約20年間にフランスの陶磁器に表れたジャポニスムの動きを仏の陶磁史研究家の個人コレクションを中心に紹介する展覧会である。

 銅版画家フェリックス・ブラックモンがデザインを手掛けた有名な「《ルソー》シリーズ」は、フランス陶磁器におけるジャポニスムの幕開けを告げた画期的な作品として知られている。パリの食器製造販売業者、ルソーが、印象派のグループ展にも参加していたブラックモンに装飾デザインを依頼したこのディナーセットは、「北斎漫画」をはじめとする葛飾北斎の絵手本や歌川広重の錦絵などから大胆に絵柄を引用する。魚や鳥、昆虫、花といったモチーフをランダムに組み合わせたデザインは、今見てもポップで、生き生きとした動勢が印象的だが、対称性という伝統を無視した自在なデザインは、当時のフランス人にとってまさに衝撃的だった。

 そのブラックモンをいち早く芸術監督として迎えた陶磁器メーカー、アビランド社が生んだ製品の数々からは、その後の陶磁器におけるジャポニスムの展開が見えてくる。バルボティーヌと呼ばれる技法は、泥しょうを塗って絵画のように絵付けをする1870年代の新技法。ここでは、日本の花鳥の図柄だけでなく、印象派風の粗い筆触まで陶器の表面に写し出す。さらに、日本の漆器や簡素な茶陶などの影響を受けた花器や壺(つぼ)も並ぶ。

 浮世絵から古陶磁の作風まで取り入れた多彩な作品は、生活の隅々にまで及んだ日本美術の浸透力をよく伝えている。22日まで。岐阜県現代陶芸美術館に巡回。

(編集委員 宮川匡司)

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