N
ライフコラム
エコノ探偵団

2014/6/4

エコノ探偵団

一橋大学副学長の小川英治さん(57)が事務所にやってきた。「貨幣には価値を測って貯蔵する役割もありますが、最も大切なのは商品と交換する機能。その点で企業通貨は貨幣として不十分です」。電子マネーもポイントも、商品と交換できるのは加盟店だけ。どこでも使える円とは根本的に違うという。

ポイントは付与や交換の条件を企業の判断で変更できるのも大きな違いだ。利用額が伸びないのは、条件変更で付与や交換のハードルが上がったことが背景とみられる。

明日香が報告書をまとめていると、所長がつぶやいた。「今月の給料は、事務所が新たに発行するタンテイポイントで払おうかな」。すかさず明日香は宣言した。「現金しか受け取りません」

◇            ◇

■ビットコイン 実は「実物」

国境を超える新たな仮想通貨として期待を集めたビットコイン。2月に大手取引所のマウントゴックスが破綻した後も利用は続いている。電子的な存在で一見、電子マネーに似ているが、ただ、大手電子マネー企業は「ビットコインは我々とは違う」と口をそろえる。

法的にもビットコインは特異な存在。弁護士の伊藤亜紀さんは「エディやナナコといった前払い式電子マネーでは、利用者が発行企業に対して債権を持っている」と説明する。ポイントもやはり一種の債権と考えられる。一方「ビットコインは発行主体を特定できず、債権とは言えない」(伊藤さん)。

早稲田大学教授の岩村充さんは「発行主体がないビットコインは信用貨幣でなく実物貨幣として考えるほうがよい」。その価値の源泉は発行元の支払い能力ではなく「マイナー」と呼ばれる人たちがビットコインを得るための数式を解いて一単位を“発掘”するのにかかる電気代などの費用だとみる。

ビットコインは決済にかかるコストが安いと評価する声もあるが、岩村教授は「ビットコインを生み出す費用を利用者が直接負担していないから安く見えるだけ」と指摘。「ある日マイナーたちが探索をやめたら、その費用は最後にビットコインを持つ利用者が価値暴落の損失として負担することになる」と警告する。

(編集委員 大賀智子)

[日本経済新聞朝刊2014年6月3日付]

注目記事