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ライフコラム
エコノ探偵団

2014/6/4

エコノ探偵団

■貨幣としては不十分

「電子マネーやポイントは民間が発行する“お金”みたいですね」。事務所に戻った明日香が言うと、所長が本棚から経済学の教科書を出した。「経済学者ハイエクが唱えた、民間の競争通貨に似ているね」。ハイエクは民間銀行が独自の通貨を発行し競争することで、より良い通貨が生き残ると考えた。「企業通貨が広がれば、国が発行する円の競争相手になるのかな」と、明日香は首をかしげた。

事務所の呼び鈴が鳴った。扉を開けると、早稲田大学の岩村充教授(64)が立っていた。「円や企業通貨など“お金”の価値がどこから生まれるかが重要です」

お金の歴史は貝や石、金など、それ自体に価値があって商品と交換できる「実物貨幣」から始まった。だが20世紀に金本位制が終わり、発行元の支払い能力を信用する人が商品と交換する「信用貨幣」が、世界的な主流になった。

「円も信用貨幣。価値の裏付けは日本政府の信用です」と、岩村さん。政府が税金を集め、財政安定にむけ努力すると信じられているからこそ円の価値が認められる。

電子マネーやポイントも、発行企業の支払い能力が裏付けの信用貨幣といえる。ただ、岩村さんは「今の電子マネーは円の存在を脅かす競争相手にはなれない」とみる。「どうしてですか」と明日香が尋ねると、岩村さんはほほ笑んだ。「電子マネーの価値は円で測るからです。円の価値が下がれば電子マネーの価値も下がってしまいます」

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