ライフコラム

エコノ探偵団

電子マネーはお金と同じ? 交換機能には限りあり

2014/6/4 日本経済新聞 朝刊

「夫の小遣いを電子マネーで渡そうと思うの」。近所の主婦がそう言って「ためたポイントで買ったのよ」と、クッキーをくれた。探偵、深津明日香は「電子マネーやポイントも、円と同じお金なのかしら」と疑問を感じ、調査に出かけた。

■発行企業の「信用」価値生む

まず向かったのは5月にカード型の電子マネー「auウォレット」のサービスを始めたKDDI。前払い式で、使う金額をあらかじめカードに入金する。事業開発部長の中井武志さん(38)は「マスターカードのクレジットカードが使える店なら海外でも支払いに使えます」と説明する。

外に出ると、電子マネーの楽天Edyを発行する楽天エディ事業企画部の奥田聡さん(32)が待っていた。「3月末の発行枚数は累計8100万枚。ライバルは小銭です」と、不敵に笑った。

「電子マネーが広がれば、現金は要らなくなるのかしら」と、明日香は硬貨の製造枚数を調べた。一円玉と五円玉は2013年、各55万4千枚造られた。1993年と比べ、一円玉の製造枚数は2277分の1、五円玉は746分の1に減っている。

国立情報学研究所准教授の岡田仁志さん(48)から電話がかかってきた。「日本は世界的な電子マネー大国です」。本格的に普及し始めたのは07年。先行した欧州や東アジアでは広がらなかった。「クレジットカードより現金を好む日本人には前払い式の電子マネーが合うようです」

「電子マネーはどのくらい使われているのかしら」。明日香は統計を基に考えることにした。総務省の家計消費状況調査と住民基本台帳に基づく世帯数から推計すると、13年の電子マネー利用額は約2兆6千億円。08年の2.8倍だ。家計消費支出の1.6%程度と規模は小さいが、割合は5年で倍以上に膨らんだ。

事務所に戻る途中、野村総合研究所上級コンサルタントの安岡寛道さん(44)が話しかけてきた。「電子マネーが広がった背景として、利用額に応じて付くポイントのお得感は見逃せません」。買い物の支払いに充当できるため「大半の人がポイントを貯金同様“資産”と考えています。電子マネーもポイントも、いわば企業が発行する通貨。“企業通貨”と呼ばれます」。

弁護士の伊藤亜紀さん(41)が歩いてきて「電子マネーやポイントで商品を買うと、発行した企業が店に代金を払います」と説明した。

明日香が「発行企業が代金を払えなかったら?」と不安になるとセブン・カードサービス執行役員の磯辺俊宏さん(58)が肩をたたいた。「支払いに困らないよう現金を用意しています」。前払い式電子マネーを発行する企業は支払い能力を裏付けるため未使用残高の最低半額の供託を法律で義務付けられている。

「ポイントにも法規制がありますか?」と伊藤さんに尋ねると「あくまでおまけなので、ありません」。Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブの広報担当者が現れ「おまけとはいえ発行分の現金は確保しています」と、胸をたたいた。

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