■自宅で訓練可能

「画面に映った棒グラフが伸びるようにがんばってください」。

棒グラフが映った画面の前に座るのは手がまひした患者。頭には帽子のような装置をかぶっている。大阪大学などが開発中のリハビリ風景だ。棒グラフは患者の脳内の動きを視覚化したもので、正しくイメージできると上に伸び、失敗すると下がる。

大阪大学の三原雅史特任助教は、重度のまひで手足を動かせない患者が脳を働かせる「イメージトレーニング」を実施する手段として、脳の血流の変化を測り、ほぼリアルタイムで活動状況を読み取る近赤外分光法(NIRS)を活用する。

自分の手を動かしている状態を思い浮かべると、実際に手を動かす時に働く脳の同じ領域が活発になる。NIRSを使うことで、正しいイメージを思い浮かべているかどうかを患者自身が判定でき、効果的なトレーニングができるという。

森之宮病院(大阪市)と連携して実施した臨床研究では、週2回、2週間練習を続けたところ、10人のまひが改善した。指で服の端をつまめるようになった人もいたという。

いったん正しいイメージを浮かべられるようになれば、自宅でもトレーニングは可能。「装置の小型化などで手軽に取り組めるようにしたい」と三原特任助教は話している。

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回路再生 仕組み解明進む 医工連携で支援機器も

「ニューロリハビリテーション」では、傷付いて作用しなくなった神経の代わりに周囲の神経にその機能を担わせる。映画「スーパーマン」で知られる俳優の故クリストファー・リーブ氏が落馬事故による脊髄損傷で四肢まひとなって5年後、指を動かせるようになったことも一例だ。

ニューロリハビリは1990年代以降、徐々にその仕組みが明らかになってきた。現在では磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)などで神経回路が再び構築されることが確認されており、臨床現場での活用も進んでいる。

仕組みが解明されるのに伴い、医工連携によるリハビリ用のツールも登場している。筑波大学発ベンチャー企業サイバーダイン(茨城県つくば市)が開発したロボットスーツ「HAL」は、医療機器として欧州で認証を受けており、ドイツでは労災保険の保険適用を受けるなどの広がりをみせている。

(鴻知佳子、山崎大作)

[日本経済新聞夕刊2014年5月29日付]