相談アプリで悩み解消 弁護士・医師…気軽に質問
「先方が納品代金をなかなか払ってくれない。訴訟を起こそうかと思っている」
都内でシステム開発会社を経営する男性(35)は今年1月、スマートフォン(スマホ)のアプリ「相談LINE」で、ある弁護士に電話相談した。同社は昨年3月、取引先の企業にシステム開発を依頼されて納品したが、開発費120万円を払ってもらえていなかった。弁護士は電話でトラブルの内容を詳しく聞き、訴訟に必要な手続きや料金体系などを説明。「取引先に定期的に電話をかけて催促し、様子を見てください」とアドバイスした。
わかりやすく工夫
取引先は開発費の一部を数万円ずつ分割して振り込んで、先延ばししていた。男性は辛抱強く電話をかけ続け、満額を無事に回収。弁護士はその報告を受けて「係争案件があるときは気軽に問い合わせください」と語ったという。
相談LINEはシステム開発のダイス(東京・新宿、渡辺一生社長)が、昨年7月から運営を始めた。弁護士が在籍する全国200の事務所が登録している。アプリには「借金」や「知的財産権」「交通事故」など相談項目が16あり、相談したい項目をタップすると事務所の連絡先などが現れる。アプリを通じて電話をすれば通話料や初回相談料は無料だ。
アプリでは事務所の電話番号や住所のほか、相談料の目安や弁護士の顔写真、過去の実績も確認できる。初めて相談する人でもわかりやすく工夫。渡辺社長は「気軽に相談できるようにした。法テラス(法務省所管の日本司法支援センター)と並ぶ相談窓口に発展すれば」と話す。実際に利用した冒頭の男性も「ハードルが高いイメージが払拭された」と話す。アプリを使った相談件数は4月までに累計1万5000件にのぼる。
弁護士側は情報掲載料として月額1万5000円を支払う。初回相談が無料でもその後、実際に訴訟につながるケースなどを見込む。富士見坂法律事務所(東京・文京)の井上義之弁護士は掲載後、相談件数も受任件数も増加傾向にあり「費用対効果は大きい」と語る。弁護士間の競争も激しく、アプリは訴訟案件をつかむきっかけになる。
弁護士だけではない。専門家に相談できるアプリは続々と登場している。サイバーエージェント子会社のサイバー・バズ(東京・渋谷)は昨年8月、医師にメールなどで相談する「Doctors Me(ドクターズミー)」の配信を始めた。
「子供の病気」や「腰痛」、「介護の悩み」など相談項目が9種類あり、それぞれの専門医が対応する。利用者は匿名で相談できる。質問内容を公開するかどうか選択し、文章を書き込んでメール送信する仕組みだ。医師が150人体制で24時間対応し、原則30分以内に回答する。利用料は月額300円(税別)。寺田佳史事業開発本部局長は「病院に行くのを迷っていても、まず医師に相談でき、病院に行くきっかけにもなる」と語る。
家計やファッションも
NTTメディアサプライ(大阪市)の「TOIRO(トイロ)」では、掲示板でFPに将来の家計を相談できる。FPに1回40分間の面談をアプリ経由で申し込める。費用は3000円(税別)。
スタイルレシピ(東京・渋谷)の「Sutarepi(スタレピ)」はプロのスタイリストにアプリで全身を写した写真や質問内容を送り、ファッションのポイントなどのアドバイスをもらえる。
利用者にとっては身近とは言えない専門家に相談しやすくなり、専門家も仕事のチャンスやヒントを得る機会としているようだ。
(企業報道部 浅山亮)
[日本経済新聞夕刊2014年5月29日付]
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