2014/5/21

エコノ探偵団

増井さんが注目するのは、行動経済学の第一人者、ダン・アリエリー米デューク大学教授の寄付行為に関する実験。「人が善行をするのは他人によく見られたいからだ」との仮説を立て、寄付した人がわかるように公開されている場合と非公開の場合で行動を比べた。公開されている方が寄付の回数が多かったが、優遇税制などを導入すると、「寄付の見返りを得ている」と見られるのを嫌がる人が増えて寄付は減った。

一方、寄付が非公開の場合、他人の評価を気にする必要がないので、優遇税制を導入すると回数は増えた。アリエリー氏は実験を通じ、他人の評価を気にする「イメージモチベーション」と呼ばれる行動原理を証明できたと主張する。この実験結果が日本人にも当てはまると考える増井さんは、「日本も寄付税制がだいぶ改善されたので、寄付の使い道を明示し、個人名を公開するなど寄付をした人へのきめ細かいフォローがとりわけ大切ですね」と補足した。

帰り道、ランニング中のニッセイ基礎研究所・主任研究員の土堤内昭雄さん(60)が声をかけてきた。「市民ランナーの間では、毎月走った距離に応じて被災地に寄付する活動が広がっています。寄付は日常生活の行動と考える人を増やす工夫が肝心です」

「寄付はこつこつ続けることが大切ね」。明日香の独り言を耳にした所長は「依頼人の信頼を得るには報告後のフォローも大事だぞ」と一言。

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企業と個人の連携広がる

国税庁の税務統計によると、企業の寄付額は2011年で約7168億円。個人と同様に足踏みが続いているが、変化の兆しはある。個人に代わって企業が寄付金を負担するクリック募金のほか、企業が特定の商品の売り上げの一部を寄付する「寄付つき商品」、買い物などでたまったポイントを寄付に回せる「ポイント還元寄付」など個人と協力しながら寄付を増やす取り組みが徐々に広がっている。

キユーピーが08年に導入した「マッチングギフト制度」は企業と従業員が協力する試みの一つ。希望者は、毎月、最大10口(1口100円)まで給与天引きで自分が選ぶ団体などに寄付し、会社も同額を上乗せして寄付している。寄付先が適切かどうかを判断する委員会組織を設け、寄付先から活動内容の説明を受ける場もある。

従業員の約2割が同制度を利用中。社会・環境推進部課長の前田淳さん(55)は「寄付への関心はあっても行動に移しづらいという人の背中を押し、社会・環境活動の意識を高める役割を果たしています」と話す。

就職先を選ぶときには「社会への貢献度、影響力」を重視する若者が増えているとの調査結果もある。社会貢献を意識する企業が増え、様々な活動の一環として寄付にも目を向ければ、寄付文化を育てる原動力になるだろう。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞朝刊2014年5月20日付]

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