歌舞伎座5月公演未来の団菊、海老蔵・菊之助に注目

新しい歌舞伎座になって初の団菊祭。併せて十二世団十郎一年祭となると、未来の団菊たるべき海老蔵と菊之助に注目が集まる。中でも両者顔を合わせる「勧進帳」が、彼らの今を表す清冽(せいれつ)な舞台だ。

海老蔵の弁慶はドラマの展開、役の心理に分析と計算を行き届かせる。なぜあのように演じるのかを見る者はおのずとたどり、それが海老蔵理解へと通じるところが、この異能の役者の真骨頂か。これからも演じ続けるであろう弁慶の、今この時なりの海老蔵の出した答えがここにある。5年後、10年後、海老蔵はまた違う弁慶を演じるに違いない。菊之助の富樫はその一つ一つを丁寧に受け止めつつ、爽やかな正統性の中に溶かし込む。大先輩の芝雀の義経もまた2人に負けぬ若々しさで、筋目の通った対応ぶり。

海老蔵は「幡随長兵衛」でも菊五郎の水野、時蔵の女房ら大先輩の助演を得て、男伊達(だて)としての骨格をつかんで今この時の長兵衛を描き出す。

菊之助は歌舞伎座では15年ぶりとなる「鏡獅子」。成長の跡は言うもさらなり、前ジテの清楚(せいそ)、後ジテの清爽。非の打ちどころない踊りぶりだが、ついそれ以上をという欲を見る者に抱かせる。

海老蔵、菊之助の成長進化に目を見張りつつも、菊五郎の「魚屋宗五郎」を見ると、まさにここに大人の芸があることを実感する。演じ重ねた役だが、今回ひときわ、その充実感に圧倒された。古希を過ぎてなお菊五郎を駆り立てるものは何か。時蔵、団蔵、橘太郎、梅枝、さらに左団次、錦之助と水も漏らさぬ布陣。

左団次が久々に「毛抜」を演じて、まさに年の功。松緑の「矢の根」に田之助が十郎で本格の和事を見せる。25日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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