水槽でトラフグも 「陸上養殖」なぜ増える

「最近は陸の水槽で育つフグもいるんです。食べてみたいな」。事務所を訪れた会社員の話に、食いしん坊の探偵、深津明日香が興味を持った。「海のマグロ養殖は有名だけど、陸でも育つなんて。技術革新が起きているのかな」と調査を始めた。

魚、工業の手法で安定出荷

明日香は早速、栃木県で温泉を使ってトラフグを養殖しているという夢創造(那珂川町)を訪ねた。周辺のプールなどで年約3万匹を飼育。2011年から本格出荷を始め、いまは栃木県内を中心に100カ所以上の飲食店などに納入。今年からはサクラマスも出荷する予定だ。

社長の野口勝明さん(57)は「地域資源の温泉で何ができるか考えた結果、高級魚の養殖にしました。漁業権の制約がなく、温泉の利用権も地元研究会のメンバーが持っていました」と説明した。

温泉の塩分濃度は幸いにもトラフグの体内(0.9%)とほぼ同じだったが、水質や水温の管理を徹底した。「陸上養殖は工業製品です」と野口さんは強調する。

明日香は次に、宮崎県で12年12月から養殖ヒラメの本格出荷を始めた宮崎綾海魚センター(綾町)を訪ねた。山あいの町に陸上水槽を設置。海水と淡水を混ぜた汽水を使用し、ろ過・殺菌してから循環させ、年2000~3000匹を主に直営店に出荷する。他の魚種への拡大やくんせいなど加工品販売も検討中だ。

社長の川崎由貴夫さん(60)は「当初は沿岸部での養殖を考えましたが、漁業権がない上、港湾に陸上水槽を設置するにも土地が国有でしたので、あきらめました」。

直営店は養殖ヒラメと野菜料理の洋風レストラン。消費者の評判は上々で、来店客の1人で飲食店経営の桜井大和さん(41)は「山でヒラメを養殖できるのかと半信半疑で来ましたが、食べておいしかったです」と語った。

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