昨年末、ユネスコの無形文化遺産に和食が登録され、その魅力がクローズアップされた。ただ、味噌やしょうゆ、漬物、塩蔵品などを多用するため、塩分摂取量が多くなりがちという「弱点」も抱えている。
厚労省の平成24年国民健康・栄養調査によると、日本人の1日の食塩摂取量(20歳以上)は、男性11.3グラム、女性9.6グラム。9年前の男性12.7グラム、女性10.9グラムからは減る傾向にあるものの、ペースは緩やかだ。
減塩が進まない中、2015年版、日本人の食事摂取基準では、1日の食塩摂取量の目標が、前回の男性9グラム、女性7.5グラムから男性8グラム、女性7グラムとされた。男女とも平成24年の摂取量から1日あたり2グラム以上の減塩が必要となった。
ちなみに、高血圧症の人ではさらに厳格な塩分制限が必要で、日本高血圧学会が示す塩分摂取目標値は1日6グラムである。
厳しい塩分摂取目標が設けられたのは、過剰な塩分摂取が様々な病気のリスクを高めることがわかっているからだ。
最も代表的なのが高血圧。日本人の減塩に詳しい日本大学医学部総合健診センター(東京都千代田区)医長の高橋敦彦氏は、「食塩に反応しやすいタイプの人では、過剰な塩分摂取が高血圧の原因となる。また、高食塩は脳卒中や心疾患のリスクも高める。ナトリウムとともにカルシウムも排せつされてしまうことから、尿路結石や骨粗しょう症も助長される」と説明する。
高橋氏によれば、さらに「胃がんの原因であるヘリコバクターピロリ菌が高食塩下で増殖しやすいため、胃がんのリスクも高まる。疫学調査では塩分の摂取量が多い人にぜんそくが多く、動物実験で食塩の投与によりぜんそくを発症することもわかっている」そうだ。
特に、高齢者、肥満の人、糖尿病、腎臓病の人は、食塩の影響を受けやすいので注意が必要だ。
とはいえ、塩分を取り過ぎていると自覚している人は少ない。南大沢メディカルプラザ(東京都八王子市)の塚本三重生氏は、「納豆についているタレを全部使うようなら、濃い塩味に慣れており、塩分摂取量が多い可能性が高い」と話す。