年代別、快眠のススメ 大人は30分内の昼寝効果的厚労省が指針 高齢者は無理に長く寝ない

健康づくりのための睡眠指針を厚生労働省が3月末、11年ぶりに改めた。眠りのよしあしが健康状態に関わることなど科学的に解明されてきた内容を反映した。年代別に必要な睡眠時間や陥りやすい睡眠トラブル、対処法が変わってくる。正しい知識を得て、快眠を目指したい。

厚労省が前回の睡眠指針を出したのは2003年。その後、研究成果が積み重なるとともに、住民を対象としたアンケートなどから睡眠と健康との関係がより分かってきた。「眠りの質が悪いと中高年に起こりやすい高血圧や糖尿病、脳卒中のリスクを上げ、うつ病にもなりやすい」といったことが一例だ。そこで、厚労省は新たな指針をまとめた。

人は毎日睡眠をとり、脳や体を休めて疲れをとっている。日本人の場合、成人の約6割は睡眠時間が6時間以上8時間未満だ。「個人差はあるものの、必要な睡眠時間はこのあたりが目安だ」と、指針の検討会の座長を務めた日本大学の内山真主任教授は指摘する。また、年代に応じて睡眠時間は変わってくるが、日中に眠気で困らない程度の睡眠が好ましいという。

新指針では若年層、勤労者、高齢者と年代別に3つに分けて、陥りやすい問題点や眠りの質を高める方法をまとめた。

朝、日光を浴びる

まず、思春期を迎え夜寝るのが遅くなりがちな10代。最近はスマートフォン(スマホ)に熱中する若者も多い。メールやゲームは夜更かしの原因になるほか、光の刺激で目が覚めてしまう。

寝不足だと昼間眠くなるほか、最悪の場合、朝起きられずに学校に行けなくなり不登校に陥る例もある。体の1日のリズムを刻んでいる体内時計も乱れる。ただ、10代は親の言うことが煩わしくなり、目の届かない所でいろいろなことをしたくなる年ごろ。スマホを悪者にしても問題は解決しない。昔の若者も深夜ラジオに耳を傾けるなどで夜更かしをしがちだった。

大切なのは規則正しい生活を送ること。朝、目が覚めたらカーテンを開け日光を浴びるようにすると体内時計をリセットできるという。内山教授は「若いときは8時間以上寝るのが理想的だ」と話す。

働く世代でよくあるのが、仕事や資格の勉強などで寝不足になるケースだ。日中に眠気を感じ、結果的に作業効率が下がりミスも増えてしまう。睡眠不足が続くと、疲労回復も難しくなる。

このため指針では、仕事の途中で眠気が生じる場合は、30分以内の昼寝が効果的だとした。特に「午後の早い時間の昼寝がよい」と国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長は話す。ただし、昼過ぎや夕方に寝ると夜の眠りが浅くなるので注意が必要だ。また眠気が取れても疲労回復にならないので、「夜にゆっくり寝る時間を確保する努力も必要だ」(三島部長)。

次のページ
日中の眠気に注意