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常温にしてから 厚切り赤身肉、軟らかく焼く極意 輸入肉を国産霜降りのように…

2014/4/18 日本経済新聞 プラスワン

食べ盛りの息子たちに「今晩何食べたい?」と聞くと、「牛肉がいい」「できればステーキ」などと返ってくる。それなら割安な輸入牛肉を、国産の霜降り牛肉のように軟らかく焼いておやじの株を上げられないか。1週間、ステーキと格闘した。

黒毛和牛だとステーキに向くサーロインが100グラム当たり1000円を超えることも多いが、輸入牛なら100円台の目玉商品だってある。近所のスーパーで価格を見比べて記者(52)は輸入牛に強い期待を寄せた。ただ予備知識を持たずに自宅で焼いたところ、最初のひと口で食卓の会話が消えた。硬すぎてかみ切れなかった。挽回すべく、赤身の輸入牛を軟らかく焼くコツを探ることにした。

■道具使ってたたく おいしさ今一つ

まず思いついたのは、肉を冷蔵庫で熟成させること。軟らかい熟成肉を出す飲食店が増え、家庭での熟成を勧めるネット情報も出ている。しかし、熟成肉に詳しい帯広畜産大学准教授の島田謙一郎さんに問い合わせたところ、「家庭の冷蔵庫で肉を熟成させるのは難しい」と言う。

熟成させるには温度や湿度を一定にして空気を循環させなくてはいけない。だが家庭の冷蔵庫は、食品の出し入れが激しくて低温すら保てないので向いていないという。

米国食肉輸出連合会シニアマーケティングディレクターの山庄司岳道さんに聞いても「家庭の冷蔵庫では腐敗が進むだけで危険」という答えが返ってきた。まずは、安易な思いつきを反省させられることになった。

それでは包丁や肉たたきといった道具を魔法のつえにできないか――。肉のスジを切り、さらに包丁の背や肉たたきでトントンたたく、すると厚さ1センチほどの肉は、せんべいのようになり、ばらばらになってしまった。慌てて手で元の形に戻し、強火にかける。これは軟らかかった。だが味はいま一つ。濃いたれをかけて食べる子どもたちを見て、もっといい方法がないかと、もどかしく思った。

このあたりから迷走し始めた。パイナップルジュースに漬け込んだらどうか――。果物の酵素が肉の細胞を軟らかくすると聞いて試した。なるほど軟らかくなったが、今度は果物の風味が気になった。

救ってくれたのは、肉に詳しい料理家の宍倉たけるさんだった。千葉市で老舗精肉店を営む傍ら、フランス料理店などを切り盛りしている。この名人は、「2センチほどの厚い肉をじっくり焼いてみては」と助言してくれた。

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