2014/4/9

経済学には、所得が増えると消費もそれに比例して増える「ケインズ型消費関数」、老後に備えて若い時は消費を抑制する「ライフサイクル仮説」、その場の雰囲気で不必要なものをまとめ買いしてしまうなど人間の「非合理性」に焦点を当てた行動経済学の仮説など、様々な消費理論がある。「周囲に同調しやすいなど、日本人の消費行動は行動経済学の分析対象になりやすかったのですが、最近は『合理性』や『長期的な視野』を重視して行動する、ライフサイクル仮説が当てはまる人が増えています」と徳田さん。

「家計簿をしっかりつけたらお金がたまるかしら」とつぶやく明日香に、「調査記録もしっかりつけて、依頼人を増やしてほしいな」と所長が一言。

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消費のパターン多様化

消費者の行動パターンを表す経済学の仮説は、ほかにもある。ジェームズ・デューゼンベリーが唱えたのは「相対所得仮説」と「習慣仮説」。前者は、近所の人や会社の同僚らと比べた「相対的な地位」が個人の消費水準を決めるとする説。後者は、人は生活習慣をなかなか変えられず、所得が変化しても消費はあまり変化しないと指摘する説だ。

ユニークなのはロバート・ホールが提唱した「ランダムウォーク仮説」。自分の満足度を最大にしようとする消費者の動きは予測不能であり、所得の変化とは関係がないと結論づける。

どの仮説が現在の日本に最もよく当てはまるのか。多様化が進む日本人の消費行動を一律に論じるのは難しいが、専修大学教授の徳田さんが指摘するように、周囲に流されず「合理的」に支出する「賢い消費者」が増えているのは確かだろう。

全国約9千世帯を対象に家計調査を実施している総務省消費統計課長の永島勝利さん(46)は「季節性に消費が左右されやすい日本人の特性、消費増税の影響などを見ながら、きめ細かく消費の実態をつかむようにしている」と話す。国内総生産(GDP)の約6割を占める消費の動向は日本経済の先行きを大きく左右するだけに、経済理論、統計データなど様々な角度からの分析が求められている。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞朝刊2014年4月8日付]