景気回復でも将来が心配
最初に向かったのは、年間の販売部数が60万~70万で日本最多とされる『明るい暮らしの家計簿』を発行する、ときわ総合サービス(東京都中央区)。家計簿商戦は例年、年末で山を越すが、今年版は年明け以降も書店からの引き合いがあり、現在も売れ続けているという。常務取締役の国光幸人さん(56)は「消費増税で家計の負担が増し、家計簿をつけてお金の流れをしっかりチェックする人が増えています」と説明した。
次の訪問先は、小学館で家計簿の編集を担当する今川和哉さん(32)。「家計にマイナスの要素があると家計簿の売れ行きが伸びる傾向があります」。雑誌と書籍の中間形態である「ムック」型の家計簿市場は業界推計で300万部を上回り、価格は500円前後が中心。2008年のリーマン・ショック後、発行部数が約10%伸び、今年版も全体で数%増えたもよう。同社の『細野真宏のつけるだけで「節約力」がアップする家計ノート』は、経済評論家の細野氏のコーチを受けながら記入していく形式で、今年版の売り上げは11万部と13年版に比べ10%増えた。
同社が発行する女性誌『女性セブン』が12年秋に既婚女性200人を対象に実施したアンケート調査によると、家計簿をつけている主婦の平均貯蓄額は838万円で、つけていない主婦の644万円を大きく上回った。「細野氏の家計ノート(12年版)の読者アンケートでは約9割の人が、節約ができたと回答しました」と今川さん。
「お年寄りが新たな購買層です」。講談社・生活文化第一出版部部長の相場美香さん(49)も話に加わった。主力の『かんたん家計ノート』は約30万部で横ばいだが、10年に発売した『かんたん年金家計ノート』が今年、5万部に達した。「消費増税対策の特集ページが好評です」
「若者を中心にスマートフォン(スマホ)などで家計簿アプリを利用する人が急増しています」。ミロク情報サービス・ネット事業部部長の堀貢一さん(43)が声をかけてきた。同社は昨年秋から、家計簿・経費精算アプリなど3種類のアプリを無料で提供している。オリジナルキャラクターが登場するアプリ『節約カネ子』は買い物レシートをスマホで写真撮影するだけで金額を自動入力する機能などを備える。ダウンロード数は3種類合計で約21万。「業界他社が提供する家計簿アプリの中にはダウンロード数が100万を超えたサービスもあり、さらに伸びる余地が大きいと思います」と堀さん。