乳酸菌を摂取

東京大の一戸猛志准教授(ウイルス学)のマウスを使った実験では、腸内細菌の数が多い方がインフルエンザにかかった時に症状が軽く済んだり、短期間で肺のなかのウイルスが除かれたりすることが分かった。細菌から出るシグナルが血液を通じて肺に達し、インフルエンザウイルスへの抵抗力を生み出す発熱などを引き起すと考えられる。

具体的にどの細菌がこうした働きをしているかのメカニズムは完全に解明されていないが、一戸准教授は「インフルエンザへの免疫を高めることと、腸内細菌の数を増やすことが密接に関わっている」と説明する。

免疫力を高める細菌としてよく知られているのが乳酸菌だ。乳酸菌は免疫をつかさどるリンパ球の約2割を占めるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する役割を担っている。

伊万里有田共立病院(佐賀県有田町)などが11年、小学生ら約1900人に乳酸菌入りのヨーグルトを摂取させ、インフルエンザへの感染を調査。同町の小学生は0.64%で、佐賀県全体(4.37%)を下回ったという。

順天堂大医学部の奥村康・特任教授(免疫学)によると、摂取した乳酸菌が腸管の内壁から体の中に取り込まれ、血中のNK細胞を刺激して活性化させる。NK細胞の活性化による免疫力の向上には「β―グルカン」とよばれる多糖を含む、シイタケなどのキノコ類も効果があるという。

ただ「ヨーグルトや乳酸菌飲料は過剰に摂取すると下痢を起こす可能性もある」(奥村特任教授)という。食べるのは適量を心がけたい。

◇            ◇

免疫力低下▼ 加齢やストレスも要因 日ごろの対策必要

腸内環境は免疫力を決める重要な要素だが、それだけではない。加齢や生活習慣による部分も大きい。加齢の影響は避けることができないが、日常生活の管理で気をつけるべき点は多い。

東京理科大の安部良教授(免疫学)が挙げる一例が、強いストレス。人間はストレスを感じると体内で免疫の働きを抑制するホルモンを分泌するためだ。たばこに含まれる化学物質はNK細胞などの働きを下げるため、喫煙も注意が必要だ。

空気が乾燥するとウイルスの侵入を防ぐ粘膜の中の細かい毛や粘液の働きを落としてしまうため、乾燥する冬場には加湿器を使用したりマスクを着用したりといった対策が有用だ。

一方、年をとると新たに作られる免疫細胞の量が減ったり、皮膚に含まれる水分量が減ったりして、細胞間の隙間から異物が侵入しやすくなったりする。安部教授は「加齢によって免疫力が一定程度低下することは仕方がない」と説明する。高齢になるにつれ、生活習慣には一層注意したい。

(塩崎健太郎、後藤宏光)

[日本経済新聞夕刊2014年4月3日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント