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「洋画家たちの青春」展 美術史の隙間埋める

2014/4/9 日本経済新聞 朝刊

派手さはなくても発見の多い展示だった。明治の洋画史にその名を残す白馬会ならば、創設メンバーの黒田清輝と「外光派」の名称とともに、その活動はよく知られている。ところが、その後を継いだ光風会となると、一部の画家を別にすればこれまで広く知られているわけではなかった。

東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで開催中の「洋画家たちの青春――白馬会から光風会へ」展は、この美術団体が、大正昭和の画壇に果たした役割を見つめ直す初めての本格的な展覧会である。

光風会は、1912年、白馬会出身の画家三宅克己、中澤弘光ら7人が結成した。白馬会の外光表現を受け継ぎつつ、文展(文部省美術展覧会)などの官展に近い場所で、具象絵画の手堅い表現を追究した作家が多い。今回の展示は、白馬会から光風会に受け継がれた具象表現の系譜を、会員のみならず、光風会展に出展経験がある多彩な画家を含めて回顧する。

矢崎千代二「秋の園」は、第5回白馬会展への出展作。薔薇(ばら)の棘(とげ)に着物の袖をかけた少女のしぐさと表情をみずみずしく描いた油彩画だ。背景の緑の陰影豊かな描写は、パリのサロンにも度々入選したこの画家の確かな技量をよく伝えている。辻永(ひさし)「ハルピンの冬」は、北国の雪道に日が差す情景を描く。明るい色彩と微妙な光の描写は、外光派の血脈を継ぐ画家ならではだろう。

黒田や久米桂一郎、藤島武二、岡田三郎助ら白馬会系の大御所や、小磯良平、猪熊弦一郎、脇田和といった後に新制作派協会で活躍した画家の若き日の作品も集めている。こうしてみると、多彩な傾向の作家を受け入れ、育て、送り出したこの団体の、才能の受け皿としての役割も浮かび上がる。めまぐるしいイズムの変転とは一線を画す展示からは、美術史の隙間を埋めようとする意図が伝わった。5月6日まで。

(編集委員 宮川匡司)

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